第46話

 ザラリオの体から真っ赤な血が吹き出し、鎧のようにその身を纏う。


 ダンッダンッダンッダンッ


 僕はそんな彼に向けて銃弾を放つも、鎧に阻まれ届かない。

 

「ぬぅん!」 

 

 ザラリオは二本の太刀を血で作り出し、構える。

 

「行くぞぉぉぉぉおおおおおおおお!!!」

 

「『雷神』」

 

 とんでもない速度で突っ込んでくるザラリオから距離を取る。

 『アクセル』よりも遥かに上位の魔法を用いて身体能力を向上させているけど、それでもなおザラリオの方が早い。

 やはり向こうのほうが一つだけ種族が上なこともあり、素の身体能力にかなりの開きがあるようだ。

 

「ふっ」

 

 僕は刀を取り出し、ザラリオの強力な一撃一撃を的確に捌いていく。


「……妖刀。何故お前が……?」

 

 怪しい輝きを持つ紫の刀身を持った刀を見てザラリオは首を傾げる。

 

「血とは魂そのもの。血を吸うということは魂を吸うということ。吸血鬼とは」


 僕はその答えを教えるように言葉を告げる。

 

「魂を喰らう者ォ!」

 

 僕の言葉に被せるようにザラリオは叫び声を上げる。

 その姿は長年の疑問が解消したと言わんばかりだった。

 

「まさか!まさか貴様は血を吸ったというのか!一体幾つ吸った!」


 そしてザラリオは僕に向かってまるで化け物を見るような視線で睨みつけてきた。

 

「僕に刃を向けてくる者すべて」

 

 ザラリオの言葉に僕は平然と答える。


「まさかまさかまさかまさか!ありえぬ!何故ぇ!何故!どうやって!?どうやって正気を!?自分を!?いや、違う!違う!違う!貴様はここで殺すッ!お前はあまりにも危険すぎるッ!」

 

 ザラリオは自身の動揺を抱えたまま僕に突撃してくる。

 その速度は音速に達し、ソニックブームを生み出し辺りを吹き飛ばす。


「『転雷神』」

 

 僕は一つの魔法を発動させる。

 転雷神。あらかじめマークしておいた場所に一瞬で移動する魔法。

 空間魔法などないこの世界において唯一の転移が出来る魔法だ。


「なっ!?」

 

 いきなり姿を消した僕に驚愕し、背後の僕の気配に気づいたのかすぐさま後ろへと振り返す。


「ほいさ」

 

 僕は大きく伸ばした血の影から巨大な物体を取り出す。

 ドイツが使っていた80cm列車砲、グスタフに搭載されていた巨大な砲。


「なんだそれは!?」


 轟音 


 聴覚を吹き飛ばすほどの轟音が響き渡る。

 80cm列車砲、グスタフから放たれた血の砲丸はザラリオを吹き飛ばす。

 反動で僕の右半身も一緒に吹き飛ぶも、すぐに再生する。


「『転雷神』」

 

 さっきまで僕が立っていた場所に僕は戻る。

 

「ふぅー」

 

 僕の口から放たれた吐息は煙も、散らばった様々な物も、吹き飛ばされる。

 クリアになった視界に写るのは心臓。

 今まさに再生さんと蠢いているザラリオの心臓だった。

 

「龍天流奥義 餓龍天睛」

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