第8話 帝国の冷酷

「まだ、ちゃんと姉の形見を持っているじゃねーか」


 そうレクシウスはエリカを見て言った。そう言った後、炎の幕で視界を遮った。僕はレクシウスを見失った。炎の煙幕を消すのは時間がかかる。だから、僕はだいたいの攻撃位置を予測して氷の壁を作る。こういう時はだいたい後ろから来る。


 氷の壁は見事に後ろからの炎の攻撃を防いだ。だが、その時横からも攻撃が来た。僕は間一髪のところで避けた。


「少し鈍っているんじゃないか?」


 「うるさい」と僕は氷塊をレクシウスに飛ばす。それをレクシウスが炎で溶かす。僕とレクシウスの戦いは次第にヒートアップしていき、炎と氷の赤と青が入り乱れて現場は大変なことになっている。


「そーこーまーで」


 僕とレクシウスの戦いに割って入ってきたのはステラだった。僕とレクシウスとの間に入って両手を広げ、防護魔法で両方の攻撃を受け止める。そして魔法で僕とレクシウスの足元に魔法の蔦を生やして僕たちを捕まえた。蔦は僕たちに絡んで伸び、身動きをとれないようにした。


「で、空港で何をしていたのさ?」


「見てわかんねーのか」


 レクシウスは笑いながらこう答えた。ステラはそれで事情に察しがついたようで、頭を抑え、ため息を吐いた。


「いいかい? ここは空港なんだ。だから、暴れるのは勘弁して欲しい」


 そうステラが言うので僕は周りを見まわしてみた。周りは解けた氷でびしょびしょになり、ところどころに焦げ跡と氷が残っている。大惨事だった。


 僕たちは空港の職務室的な感じ部屋に連れてこられた。勿論、エリカも一緒だ。部屋は殺風景で何もない場所った。ホテルとは大違いだった。


 それからステラの説教が始まった。


 長い説教に飽き飽きしながら聞いていると、一人のステラの部下が入ってきた。僕たちの飛行機の準備ができたらしい。


「イヴァン。また今度」


 別れ際にそうステラが言った。その返事にエリカも返事をする。


「ああ、また今度」


 レクシウスが「お前だけ抜けるなんてずるいぞ」などと戯言を抜かしているが気にしない。さっさと部屋を出る。


 少しして部屋の扉が閉まるのを確認んしてから僕はこう小声で言った。


「今度か。そんな機会があるものか」


 エリカは何も言わずに僕の横をついてきて来てくれている。


 飛行機は行きと同じ普通の双発の輸送機だ。プロペラは二つある典型的な型だ。僕たちは階段を上って飛行機の後部座席に着席する。


 ここからは行きと何も変わらない快適な空の旅が続いた。

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