固い蕾

第12話 満開の花

１年後。

空には雲一つない綺麗な青空が広がっている。

『今日も綺麗だね～』

リリコはお店の前に咲いているラナンキュラスに話かけている。

手にはホース、頭では素敵な音楽が流れている。

ん？

気配を感じる・・。

リリコが振り返るとそこにはケンジが立っていた。

『リリちゃんお花と話せるの？』

不思議そうにケンジはリリコを見つめている。

『やだ～ケンちゃん、話かけてるだけよ。お花は話かけるといいんだって。』

リリコは笑いながらケンジの顔を見上げる。

『へ～、今日も綺麗だね～』

ケンジはリリコに話しかける。

『ちょっとケンちゃん。』

照れるリリコの頭をポンと叩きケンジはお店へ入っていく。

『さあ！今日も元気に楽しみますか！』

大きな声をあげるケンジ。

照れを隠しているがリリコにはすべてお見通しである。

人生のパートナーとなり一緒にお店で働くことになったリリコ。

不安もあったがお蕎麦屋さんの仕事も新鮮で充実した日々を送っている。

自然と出てくる微笑み。

リリコの心はすごく満たされていた。

辛い経験もあったけど過去の自分に言ってあげたい。

大丈夫だから。

人生楽しんでと。

窓ガラスに映る自分の姿を見ながら強く思うリリコであった。

ん？

辛い時に現れてくれた女性って…。

『リリちゃん！開店するよ！』

ケンジの声がお店に鳴り響く。そしてリリコはお客様を笑顔でお迎えする。

『いらっしゃいませ～』

今のリリコの笑顔はピンクのラナンキュラスのように綺麗に咲いている。

『大丈夫』

『人生楽しんで』

時空を超えて未来の自分が伝えている。