第2話

倒したロックゴーレムのエネルギーが自分の中に入り込んで来て、自分の力になるのがわかった。



今より体が強くなり

力場を出せる回数が増え

ブラックホールの中の空間が広がったようだ。




全裸の男を3人のギャラリーは唾を飲み込んで傍観していた。



「こんちわ!」


ビクりとする3人。


杖を持った女が口を開く。




「あなた、、、なんで裸なのよ。服着なさいよ。変態なの?でも助けてくれてありがとう。あ、でも近寄らないでね。」


「す、すまん!でも早く助けなきゃと思って!!」


「そ、そうだったのね。心から感謝するわ。でも近付かないでね。」


杖を持った女は続ける



「私は魔法使いのマホ。あんたは?」




「俺は高月聖一だ。あの、なにか服はないかな?」



急に顔を赤らめるマホ


「そ、そもそもなんで裸なのよ!もういいわ、これを羽織りなさい」


と、聖一に羽織っているトレンチコートのようなローブをくれた。


「あ、ありがとう!でも、これ完全に街角の変態だな。まあ一回死んだことだし、恥もないか!」


「ん?一回死んだ?」


「そうなんだ、別の世界にいたんだけど、一度死んでこっちの世界で復活したんだ。」



「頭を打って混乱でもしてるのね。かわいそう。」


「え?」




聖一はマホの反応で、自分がこの世界では珍しい存在だと認識する。



「まあいいや。それよりじいさんと娘さんも無事かな?!」



「おお、無事ですじゃ命の恩人様よ。」


「ありがとうなんだから!最初変態と誤解してごめんなんだから!」


ジジイと若い娘は感謝を伝える。


「ところでじいさん、人が住んでいるところまで案内してくれないだろうか?」


「もちろんですじゃ」


(ていうかなんで言葉通じるんだろ。優しい声の人からの贈り物だろうか。)


などと考えながら、聖一と3人は死んでしまった仲間を埋葬して出発した。


―――――


ジジイの名前はジャイ


娘の名前はムスメと言うらしい。


―――――


4時間後、丘の上から町が見えてきた。


(あれが町か。規模で言うと1.5㎞四方ってところだろうか。)


「あれが我々の町『ワガマチ』ですじゃ」

「なんだからね!」

「なのよ!」



「人里まで案内してくれて皆ありがとう」



感謝を伝える聖一



「いえいえ、まだまだ恩返しは足りてないですじゃ」

「足りてないんだからね!」

「足りてないのよ!」




「本当にありがとう。」




絶望から生まれ変わり、人の心に触れた聖一は心が暖まるのを感じていた。


―――――


城壁に囲まれた町に入る。門には門兵がいたがジャイが事情を説明してくれて無事町に入ることができた。


―――――


その後


ジャイが自宅の使ってない部屋があるからしばらく住めと言ってくれた。


それからジャイはおさがりの服、そして家宝までくれた。


「家宝の1つミスリルダガーですじゃ、聖一さんにもらってほしいのですじゃ」


「いやここまでしてもらって、さらにこんな良いものをもらうなんて」


「娘のムスメの事も救ってもらった。ほんの気持ちですじゃ」


「そうか。そうなのか。ありがとう」


優しいじじいだ。


ちなみにジャイはこの街一番の商人だそうだ。



それから1日過ぎて、魔法使いのマホが訪ねてきた。



「あんた!」


「え??」


「私と一緒に冒険者として行動するわよ!!」


「冒険者?!なにそれ?」


「ゴーレムのような魔物は人間にとっては災害!いくつも町が潰されてるのよ。


だから魔物を倒して皆を守る!!


あと魔物の素材は売ればお金になるのよ!」


「そうなのか」


「まずはゴーレムの目玉の魔水晶を冒険者ギルドに売りに行くわよ!そこでギルド登録して、私とチームパーティーを組んで冒険するのよ!!」


「ふっ、マホ」


「なによ」


「お前良い奥さんになるぞ」


「う、うるさいわね!!行くわよ」 


頬を赤らめるマホであった。


―――――


冒険者ギルドに行き、素材を売り、冒険者登録を済ませた。



「ゴーレムの魔水晶、わりと良いお金になったわね!」


「マホがいてくれて良かった。ありがとう」


再び頬を赤くするマホであった。


ちなみに、この世界のモンスターは大きいほどに強い!というのが一般的な指標らしい。


―――――


それからゴーレムの素材を売ったお金で装備を整える。


そして冒険に必要なものを購入してブラックホールに入れた。


(よし。準備完了!)


―――――


次の日ジャイとムスメに見送られて町を旅立つ。


―――――


半日ほど歩き



森の手前の開けた草原までやって来た二人





ドゴォゴォ!!




木が怒号を挙げながらなぎ倒されていく。


そこから巨体が現れた。



「ん!なんだ?!」

「ダッシュバイソン!!」




現れたのは角を生やした牛の形をした化け物。


6階建てのビルくらいの大きさだ。


「こないだのロックゴーレムの強さは建物級!あれはその上の物見やぐら級のさらに上!!!豪邸級の魔物よ!!」



「まじか。岩の巨人よりやばいのか。」

「やばいわよ!!でも良い点もある。生き物だから私の光魔法も効く!ライトニングゥ!」


まばゆい光がダッシュバイソンまでのびる。


目に光が入り動きを止めるダッシュバイソン



「よし今のうちに!!フィジカル!スピード!タフネス!」


「なんだ?体に力がみなぎる!」


「あなたに魔法をかけといたわ!持続時間は5分!!」


「サンキュー!!」



ダッシュバイソンは怒りに任せて高速でこちらに突っ込んできた。





マホを抱えて急いで移動する。


タックルは空を切る。


20mほどの距離があったのに危うくぶつかる所だった。


とんでもないスピードだ。




「すまんが隠れていてくれ。」


「わかったわ!怪我をしたら回復魔法をかけるわ!」




先程の高速ダッシュによる体当たりを見るからに大体時速80~100キロくらいか。


そしてあの体高15メートルほどの巨体だ。


(いやジャンボジェットよりでけーじゃねーか。)



鼻息を2回ほどボスンボスン鳴らしてダッシュバイソンが後ろ足をこすりだした。




来る。


少しでも距離を取ろうとジリジリと後ろに下がる。


(だいたい俺まで一秒か。)



巨大な牛が大地を大きく踏んだ!蹴りだして突進する瞬間右横に飛ぶ。


が避けきれず牛の頬が聖一の体に当たり、10メートルは吹き飛んだ。


「ガハッ」


口から血を吹き出す聖一


怪物牛はこちらを見ている。しかしからだが動かない。


(…こ、これはやばい)



「回復の光!!」

オレンジの光を聖一に飛ばすマホ




「あ、ありがとう!」


「良かった効いたわね!!!」



マホが回復してくれた。


(ヤバい化物牛がマホに注目した。放っておいたらマホに危険がおよぶだろう。俺が倒さなきゃ!)


恐怖を振り払い覚悟を決める。



突進してきたダッシュバイソンに今度はしっかりタイミングを合わせ、、、(左だっ!!)



避けきる聖一!!




避けきったあと、すれ違い様に力場を発生させて足場にして、もう一段ジャンプする。


そして角をつかみ、角を支点にして体をクルっとスイングさせて回転力そのままに、こめかみにナイフをえぐり刺す。


「グモ!!」

ダッシュバイソンが声を挙げる



そしてそのままナイフを眼球近くまで切り込み


目尻と眼球の間に肩くらいまで腕をズブリと入れる。



体に力を入れる!


足に力場で足場を作り踏み込む!


「どおりゃー!!」


80センチほど直径のある眼球をえぐり弾き飛ばす。


「ブモーー!」巨大な牛が大きなうめき声をあげる。


眼球は気持ち良く飛び、マホの目の前に落ちる。

「えッ!?」


遅れて眼球にこびりついた大量の血が雨のようにマホに降り注ぐ


「オェッ」


驚いた拍子に息を吸い、血を大量に飲み、気持ち悪くなり嘔吐する。





暴れまわるダッシュバイソンが力場で作った足場にぶつかるのを発見する。


ほどなくして力場は消滅した


(力場の新しい使い方を、思いついたぞ、、、


ゴーレムを倒したおかげで、あと2回は力場を使うことができる!えい!上手く行けー!!)


ブラックホールからロープを取り出し、角にロープをまく。


そして頭の上を駆け飛び、もう1つの角にもロープを巻き付ける


「力場ぁ!!」




ダッシュバイソンの首もとに三角形の力場を出現させる。


そしてロープをターザンのように飛ぶ。


ダッシュバイソンの顔の前に移動してもう1つ力場を出し着地!踏み込む。


「おんどりゃー!!!」





角にかけたロープでダッシュバイソンを引っ張る!すると三角形の形をした力場が首に刺さる。




三角形の先っぽの形をした、鋭利に尖った力場で首を引き裂いていく。


しかし踏ん張るダッシュバイソン!!


負けじと踏ん張る聖一!!


拮抗状態になりかけたとき




「ライト゛ニン゛グゥーー!!オェッ」


一筋の光が伸びてダッシュバイソンの片目に当たるが目をそらす。


「2回目はきかないかぁ、オェッ」


「いまだ!!」


マホが放ったライトニングの光を嫌がる一瞬!聖一は逃がさない!!



聖一が踏ん張ると


力場は楔のようにダッシュバイソンの首もとに刺さり、裂け目は広がり


ついにはダッシュバイソンの生首を一本釣りする聖一であった。



(やったぞ。ん、なんだ血まみれのゾンビみたいのが現れたぞ?!)



「うぅ。うぅ。せいいちぃ、やったわねぇぇ、オエッ」



血まみれのマホであった。

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