第3話 ≪英雄同盟軍≫

 元居た部屋はどうやら召喚された者たちが飛ばされてくる部屋なのだろう。


 ドアをくぐると、すぐに階段が見えた。


 あの部屋は、きっと召喚のためだけに作られた部屋なんだろうと勝手に思う。


 基本的に木で作られているからか、雰囲気は一気に変わって明るくなった。


「なんとなくわかってるだろうが、お前以外にも異世界に飛ばされたやつは何人もいる。そしてそいつらは一人残らず『英雄』だ。もちろん俺もな。」


 階段の下からはがやがやとした声が聞こえてくる。


「そんでもって、そんな『英雄』達は世界を救うために日夜動いているわけだが、バラバラに動いても仕方がない。そこで、一番最初に召喚されたらしい『勇者』の役を持った一人がギルドを作った。それがこの、」


 ≪英雄同盟軍≫


『英雄』の『英雄』による『英雄』のためのギルド。


 なるほど、今いる場所が騒がしい理由はそれか。



 僕たちは空いている席に着いた。


 新しい『英雄』にはもう慣れてるのか、特に雰囲気は変わらない。


「そんで、我ら英雄同盟軍の目標は…」


「目標は…?」


「この世界の神を殺すことだ」

 

 神を殺す。


 あの理不尽を、殺す。


「なんで神様を殺すんですか?」


 それで世界を救えるとは、到底思えない。


「お前、転生の神から何にも聞いてないんだな。普通、【何かしてくれ】って言われたら【なんで】とか【どうやって】って聞くだろ。」


「今聞いてるじゃないですか。」


「本人に聞いとけって言ってんだよ。…いいか。この世界の神って言うのは良い存在じゃあねえ。願いは叶えるし、人は助ける。ただ、力が強すぎる。雨を望めば洪水になる。火を求めれば水が枯れる。金を求めるとその一帯が金に変わる。生物だろうが何だろうがな。…ただ、理性がある神も居ないわけじゃない。転生の神がいい例だ。そんで、そいつらが言うわけだ。【神を殺せ】ってな。」


 神殺し。


 強すぎる故に、英雄が殺す。


「神様っていうのは殺せるんですか。」


「殺せない…って言ったらお前はどうする。」


 少し考えよう。そう思った。


 そう思ったが、身体は勝手に口を動かした。


「僕が殺す。」


「…流石『主人公』の役。だが、そうなるにはまだ早いな。なんてったって、お前はこっちに来て日が浅いなんてもんじゃない。そんなお前がやるべきは、」


 ドロシアが指をスッとさした先は。


「ギルドの登録をすることだな。」


 目線の先では、受付のお姉さんが手を振っていた。


「あれが終われば、正式に≪英雄同盟軍俺たち≫の仲間入りだ。」

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英雄転生 神様に最後の英雄に選ばれた僕は最終兵器『主人公』になってました。 @ASSARIASAKI

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