昔話
銀ビー
第1話 昔話
昔々、とある山に狐と狸が住んでおったそうな。
その地方は冬でも暖かく、いつでも美しい花と豊かな山の幸に恵まれた桃源郷のような場所じゃったそうじゃ。
「暇じゃの〜、タヌキどん」
「おう、暇じゃ。キツネどん」
狐と狸は食べ物や縄張りで争う事もなく、日がな一日を日向ぼっこをしながら過ごしていた。
「こう暇だと、お互いボケてしまいそうじゃなタヌキどん」
「ほんまじゃ、ほんまじゃ。困ったもんじゃのう。
「そうじゃタヌキどん。お互いに問答でもしてみんか?問いも答えも考えれば少しは頭を使うじゃろ。何もせんよりいいとは思わんか?」
「おお、いいかもしれんの。しかし、学のないワシらじゃ問答など思いつかんぞ」
「なあに、簡単な問題でいいんじゃよ」
「そうか、それならできるかの」
「よし、明日までに考えてこよう」
「分かった。考えよう」
そして二匹はねぐらへと帰っていった。
次の日
「どうじゃタヌキどん。問題はできたか?」
「勿論じゃキツネどん。ワシからの問題はこれじゃ」
オオカミとガチョウとお揚げを川の向こう岸まで船で運ばなくてはなりませんが、舟には1つしか乗せられません。しかし、船頭がいなくなるとガチョウはお揚げを食べてしまいますし、オオカミはガチョウを食べてしまいます。何をどの順番で運んだら三つとも向こう岸に届けられるでしょうか?
「どうじゃ、わかるか?わかればこのお揚げを馳走しよう」
大きなお揚げを目の前でヒラヒラ見せられ狐は考えます。
うーん、最初にオオカミを運んだらお揚げが食べられるし、お揚げを運んだらガチョウが食べられる。なら、最初はガチョウなんじゃろうが次がオオカミかお揚げかが分からん。
優しい狸は答えを二つにしてあげたのですが、そのせいで狐は却って悩んでしまったようじゃ。
「うーん、難しいのう。さすがタヌキどんじゃ。ワシのはこれじゃ」
大事な木の実を隠しておいた箱が分からなくなってしまいました。目の前には綺麗な宝箱と、粗末な木の箱があります。でも箱は一つしか開けられません。重くて振ったりすることもできません。さて、木の実はどちらの箱に入れておいたのでしょうか。
狐は狸に出す問題なので頓智を捻ったようじゃった。
「当てたら中の宝は全部タヌキどんの物じゃ」
当の狸はというと
「箱を開けずに中身など分らんじゃろうに。宝は欲しいがどうすればいいかの〜」
ふと、箱の横に目をやると美味しそうな木の実が一つ落ちておった。
「おっ、うまそうじゃな。ワシはこれでいいか」
木の実を食べて満足した狸がねぐらに帰ってしまっても、狐は
答えは一つとは限らない。多くを求めず満足する事も大事。そんなお噺。
この噺はそう呼ばれて永く語り継がれたとさ。めでたし、めでたし。
昔々のそのまた昔、そんな話があったとか、なかったとか。
昔話 銀ビー @yw4410
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