おじいさんは山へしばかれに

@sqnemo

⭐︎

むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんは山へしばかれに、おばあさんはおじいさんをしばきにでかけました。

おばあさんは言いました。

「さーてじいさんの奴めは一体どこにいるんだろうね」

おじいさんを探しているうちにどんどん時間が過ぎていきます。気がつくとお日様もずいぶん高くなっていました。そこでおばあさんはまずおじいさんの足跡を探します。すると川の向こう側で足跡を見つけることができました。

その辺りを隈なく探したところおじいさんの姿は見つかりません。

「どこぁいった!あのじじい!」

そう言って探し歩いているとまた一つ見つけることが出来たのです。今度は川向こうです。はてこれはどういうことかとおはあさんは首をかしげます。そして川の上をよく見ると、なんとそこには橋があるではないですか!しかもちょうど真ん中あたりに古びた小屋がありました。これは何かの手掛かりになるかもしれぬぞとばかりおばあさんは急いで駆け出しました。

一方そのころおじいさんの方はというと……若いおなごにしばかれていました。

「このクソエロじじい!これが欲しいんだろ!えい!えい!」

ビシッ、ビシッ!とムチを振り下ろす音が響きます。実はしばかれる度にちょっと嬉しかったりします。おじいさんは変態ですから……。

それにしびれるような痛みというものも嫌いではありません。

「もっと!もっとおくれ!!」

「もっと強くしてくれても構わないんだよ?」

そう言われて更に喜びを感じてしまいます。やはりドМなのでしょう。

おじいさんはそんな感じのことを思いながら、しばかれているわけです。

別におばあさんにしばかれるのが嫌なわけでもありませんが、どうせなら新鮮な気持ちでしばかれたいおじいさんなのです。まあいざしばかれてしまえばそんなことは言ってはいられませんけどね。

ただただ、痛くしてもらおうと必死になってしがみつくだけです。おじいさんはその方が楽しいですし嬉しいのです。しかしそれを見たおなごはとても不機嫌になってしまいます。まるでゴミを見下しているような目つきで罵ってきます。それでもおじいさんは構わず懇願し続けます。

「うわぁ、本当にきたないねお前」

はあはあと肩で息をしながらおじいさんの顔を覗き込んでいます。おじいさんの顔には先程打たれたところがくっきりとした真っ赤な紅葉が出来ておりました。

「ばあさんのしばきじゃ物足りんのじゃ!もっとおくれ!!」

もう既にしばかれた後なのにこんな事を言ってくるとは流石変態です。しかしおなかいっぱいになるまで食べ続ける豚のようなものですからやめようとしてもなかなか止められるものではありません。

そう言われたおなごもまたさらに不機嫌そうな顔になります。それも当然のことでしょう何故だか自分がリードする権利を握っていないような錯覚におちいるのです。自分よりも圧倒的に立場が低いと思っていたものに自分の命令に従わされるというのはプライドの高い彼女に取って耐え難い屈辱的なことでした。

彼女にとってそれは怒りの感情しか生まれませんでした。それがそのまま声となって表れてしまいます。その瞬間今まで見たことがないほどの形相となりおじいさんの顔面に拳を何度も打ちつけます。その表情はとても人に見せられたようなものではありませんでした。まるで鬼の形相のように恐ろしいものでしたが同時にとても美しいものでありました。

「こっち来い!早くしろ!!このバカじじい!!!!」

こうなったら最後お手上げ状態です。いくら殴られようと蹴り飛ばされようとおじいさんからは文句より感謝が口をついてでてくるのです。そうこう言っているうちに夜になっていました。おじいさんにとっては何ともあっという間の出来事だったのです。しかし彼女はまだ納得いきません、おじいさんをボコボコにした後満足げに微笑みを浮かべると

「またきてもいいよ……」

とおじいさんに告げました。

そんなふうにおじいさんがおなごにしばかれているとき、おばあさんは橋の上の小屋で休んでおりました。

「全く……手間かけさせるじじいだねえほんとに」

とは言いつつも少し楽しんでいた様子のおばあさんです。おじいさんをどうやってしばいてやるかを考えると笑いが漏れて仕方がありません。ふっふっと忍び笑いをしていましたが何時までも笑っていても仕方がないので真面目なことを考え始めたところで、はたとおはあさんの思考は止まりました。

(そうだ。いいことを思いついた)

そう思うや否やすぐにおじいさんを呼び出すべく小屋を出ていきます。そしてしばらくすると、はあはあぜえぜぇと言いながらやってきたおじいさんを見ておばあさんは呆れ返ったように言う。

「お前……よくそんな格好のまま来たねぇ……。汚らしいったらないよ!」

はい、と言うおじいさんを無視しておばあさんは自分の懐を探るとあるモノを取り出す。それをおじいさんに向かって突き付けた。

「な、なんじゃこれは!?︎」

おばあさんが出してきたのは縄では無く、立派な日本刀である!おじいさんは驚愕して思わず後ずさる。

「ちょっと待ってくれ!本当に天国へ行くのはちいとばかり早い!」

「がたがたうるさいじじいだね!殺しゃしないよ!」

(ただちょっとやってみたいことがあってのぅ)

ふふふ……と心の中で呟くおばあさん。

「ま、まままっ、待つのじゃ!話をきいてくりゃれい!!」

「なんだね」

と刀を突き付けたまま答えるおばあさん。はあはあと呼吸を整えた後おじいさんは言う。

「あの、おぬしはわしが死ねば愉しむ相手がいなくなってしまうが、それでもええのか?」

その瞬間ぴきり!という音をさせつつ持っていた日本刀を力任せに地面に叩きつけると、地面のひびが広がり大きな亀裂ができる。

その様子を見ながらも、まだ何か言いつのろうとするのですかさず一言、

「黙ってろこのドМ」

おばあさんはそう吐き捨てた。その態度を見ても怖気づいたおじいさんは小さくなっているしかない。おばあさんはそれを確認してから再度口を開く。

「まず私らはそいがい好ぎだからここまで来てやったんじやないか?私らが好ぎなことをする為にわざわざ時間かけてここに来てんだべ」

は、はいぃ、と情けない返事がおじいさんの口から出てくる。しかしおばあさんはそんなことは関係ないとばかりに話し続ける。まるでこれから行うことに対する期待に胸膨らませているかのように。

「だども私は違うの。おじいさんあんたをしばいてしばいてしばき倒すことが生きがいなんじゃが……」

(それに、もう我慢できないくらい疼いちまってしょうがないわ)

「でも私の楽しみ方には一つだけ不満があるんだよねぇ……」

「へ、へいなんでしょうか」

おばあさんの言葉を聞いて震え上がるおじいさんだが次の瞬間おばあさんから発せられた言葉を聞き唖然としてしまう。

「3Pがやりたいんじゃ!!さんぴー!!」

おじいさんは何を言うべきか一瞬わからずポカンとした顔をしてしまった。しかし数秒後にその意味を理解する。つまり目の前にいるこのおばあさんは、自分と同じことをもう1人のお爺ちゃんにもやって欲しいのだ。おじいさんの顔からは思わず笑みが溢れた。それはとても楽しげなものだった。

それから数時間の間、隣に住むおじいさんをとっ捕まえてさんぴーを楽しんだそうな。2人はその後一緒に暮し仲良く天国に行ったそうです。めでたしめでたし。

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