エピローグ(?)・呟き
[あれからもう1年。実はまた旅に出ようと考えてるんだ。まだゲームは続いてるのかもって思えるから。またユリカに会いに行こうとも思ってる。それでよかったらさ、エリザ、お前も]
「行くよ、私も」
手紙を読んだその日に、もう準備万端で、ネイサとイザベラが暮らす家に訪ねてきたエリザ。
3人はまた、復興作業に忙しいドロンの街で暮らしている。エリザは警備隊には復帰せず剣術道場を開き、ネイサとイザベラはまたゴーレムを使った工場経営。どちらも元手の金は、ヴェイグが存分に用意してくれた。
またルードも、もうすっかり回復し、義手にも慣れて、今は大工として、復興工事にも大活躍の毎日だった。
「ルードの奴も、今度はどうだって誘ったんだけど」
「あいつは来ないだろうな」
「ああ、復興工事が忙しいってさ」
「そう言うだろうな、あいつなら」
「しかし、早いですね、けっこう意外とドキドキワクワクですか?」
2人の会話に突如割り込むイザベラ。
「はは、まあ私も案外子供って事かな」
どういう訳だが、妙に楽しそうな視線をイザベラに向けるエリザ。
「でも気が早すぎは早すぎ。出発は明後日を予定してる」
「そうか、なら今日の所は。私もまだ忘れてる準備もあるかもしれんしな」
そしてその日は一旦帰って行ったエリザ。
ーー
その日の夜。
1人家のベランダにいたネイサ。
「師匠」
声をかけたイザベラ。
「何だ?」
振り返るネイサ。
「私」
しばらくの迷いの後に、彼女は言った。
「私、覚えてますから。1年前に、師匠、いえ、ネイサから言われた事」
(「お前の事が好きだからだよ、イザベラ」)
「私の事、好きって」
でも2人の関係は別に変わらなかった。ただの師弟として、ただただ毎日修行の日々。1年間、ただの1度も、イザベラはネイサに再び好きとは言われていない。
「えっと、だな」
まったく不意をつかれたようで、とっさに言葉の出ないネイサ。
「何ですか? 何なんですか?」と怒りすら見せた後。
「ただヘタレ、なだけですよね、ネイサ。ネイサ、恋愛に関しては駄目男だから」
いつの間にか泣きそうな顔。
「好きって、今もそうなんだよね」
「イザベラ」
確かにヘタレなのだろうネイサも、しかしさすがにこの時ばかりは勇気を出した。
「んっ」
「これがさ、あの」
いつかのように抱きしめるだけじゃなくて、ネイサはイザベラにキスした。
「ずっと変わらない気持ちだよ」
それから力強く抱きしめる。
「ネイサ」
「でも公私混同は避けます」
パッとイザベラを離すと、いつものような師匠面に戻るネイサ。
「ネイサじゃなくて師匠だ」
「は、はい」
一瞬きょとんとするイザベラ。
「はあい」
「こら、真面目に注意したんだから、そんな嬉しそうにするな」
「は、はい」
「たく」
ーー
ただ、とある女の子が見る夢の世界のどこかにある、そのハコニワの世界で、2人の大切な気持ちは生まれた。エリザやルード、ラッカスの正義も、シェイジェとシオンの信念も、アミィとヴェイグの楽しみも。
そして彼らの友情は、きっと永遠にそこにある。世界は何であっても、それは絶対に確かな事。
優しくて、強くて、かっこよくて、一途。
「ほんとはね、ネイサ。あなたは私の……」
どこかの国で、永遠の夢を見続ける眠り姫。ある日、突然、彼女は呟いた。
クリエイテッド・ライフ 猫隼 @Siifrankoro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます