第52話風に流れて(りほ視点)

「さて、どこへ行く?」


「陸奥は? 黄金の国と聴き及びます。ついでに、鬼とかもよく出るとか。鬼退治で金を稼ぎます。玉藻様にも手伝っていただきたい。


「報酬は?」


「酒」


「御神酒か?」


「左様」


 御神酒かぁ。あれ、うまいんじゃよなぁ。ただの酒ではない。良質な陰陽力がたっぷり込められている。


「量は?」


「働きに応じて」


「働くのかぁ」


「働かざるもの飲むべからず、でございます」

 これは、幼女姿の式紙。


「……うむ。しかし」



「何かご不満でも?」

 孝明が静かに聞いた。


「いや、京がこれだけ荒れ果てているのに、何故地方は栄えておるのか? という疑問が……」


「京が荒れておるのは、飢饉や疫病の他に…地方からの税収が下がっておるからでしょうな。荘園制と地方の豪族が台頭しているゆえに」


「そ奴らが税を払わない…と」


「ええ。武力を盾に〝不入の権〟なるものを振りかざしておりますな。陸奥では、我が同族・安倍氏が幅をきかせています」


「ほほう。そこでうまくやれば贅沢ができるというわけか」


「あと、奥州は色白美人が多いのです。酒も美味い!」


「それは、よい」


「「くかか」」

 わらわたちは、意気投合したように笑いあった。

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