第42話沙織ちゃんのガードを固めよう2(沙織視点)
私の名前は田鶴屋沙織。年齢は16歳。高一です。
今日は、式神の卵をつくるための撮影に来ました。
いつもは、のりりんや晴子さんも一緒に撮影するのだけど、今日は明さんと私だけが出演して撮影係が〝りほ〟ちゃん。撮影場所も寺町屋の二階ということらしいです。
(まぁ…もともと、のりりんも晴子さんもこのお店の常連さんじゃなかったからなぁ)
のりりんをここに連れてきたのは、私ですけど。
私は、知らないうちに霊障や呪いを受けやすい性質を持っているらしい。というか、明さんによると…私の感受性が強いから気付きやすいし呪いや幽霊や好かれやすいというだけで、他の人も日常的に多少の霊障や呪いをうけながら気づかずに生活しているそうです。
私は、撮影の準備を手伝いながら、始めてこのお店を訪れた日のことを思い返しました。
♠️
私の家は鎌倉時代がら続く呉服屋さんで、両親は地域の顔役のような役割を負っています。
そのためか、我が家にはお客様が常に溢れかえっているような状態で…。着物を買ってくれる人は少数なのですけどね💦
まぁ、そんなわけで、小さい頃から私は大人の人に囲まれて可愛がられて育ったのです。その影響か、人の悪意というものに疎くて…中学時代は、(みんな仲良くすればいいのになぁ)なんて思いながらクラス委員としてみんなに分け隔てなく接していたつもりです。
クラスカーストというのも、よくわからなくて…私は上位にいるらしい(?)。それも、最上位ではなく、2番手、3番手くらい(?)。最上位ではないらしいのですけど…
(最上位は誰?)
誰が誰を好きで、誰から告白されたらダメとかいうのもいまだによくわからなくて…。
中高生は、勝手に私を好きになってくれて、勝手に告白してくれて、「そういうのよくわからなくて…ごめんなさい」とふると至極恨まれる。その男子だけでなく、その男子に惚れている女子まで恨んで生霊を飛ばしてくるのだから意味がわからない。
〝告白されるだけでもアウトなのに、ましてや、ふるなんて〟
(え?)
だからといって〝はぶかれる〟といったことは、されません。
委員長として、教師からの信頼が高いからだと思います。
その分、陰口などはよく言われている気配がします。
私を取り巻く空気(?)も重い気がしてました。
悪意のある視線にも常に晒されている気がして…自分の部屋にいても、常に悪意に晒されている気がして…。気分も体もだんだん重たくなっていきました。のりりんは、そういうのを寄せ付けない体質(今となっては、守護霊が鬼で本人も鬼だからと分かっていますが)だそうで…のりりんの側にいる時だけは楽なのですが…。
♠️
中学2年の夏休み前には、何もかもが気持ち悪くなって死にたいとまで思いながら寺町商店街を歩いていました。
(重い重い。何もかも重い)
その時、ふと目に入ったのが占い・人生相談・お祓いの看板。寺町屋の看板でした。
占いとかあまり信じるほうじゃなかったわたしですが、その時はその看板だけが私を救ってくれる光明のように見えたのです。
カランコロンと古めかしい扉をあけると…
「体、重くない?」
カウンターに立っていた20代後半くらいのお兄さん(明さん)が心配そうに声をかけてくれました。
それだけで少しだけ救われた気分になります。
「ええ…最初は空気が重いだけでしたが、そのうちすべてが重くなって…」
「そりゃ、大荷物を背負ってるもん。君には見えないだろうけど…。大丈夫ですよ。その重いの全部祓ってみせますから」
30分千円で相談にのってくれるとのことで、藁にもすがる思いで頼みました。
その時、私についていたのは10体くらいの生き霊と10体くらいの死霊だったそうです。
生き霊に関しては、全員名前まで挙げて下さったのですけど…現クラスメイトや元クラスメイト、顔見知り程度の先輩や後輩までの名前がずらりと並んでました💦知ってる名前を列挙されたことで、生き霊に取り憑かれていることと明さんの腕前を確信せざるをえません。
明さんは、その全てを話し合いで解決しました。私の目には、必死に拝んでるようにしか見えませんでしたが。
強引に祓うこともできるそうですが、そうすると霊が不幸になってしまうとか。特に生き霊を強引に祓うのは、生き霊の本体に悪影響を及ぼしかねないとのことで…。
明さんは汗をかきながら一生懸命祈ってくださった。2時間くらい。
「全員、お帰りいただいたよ。どうだい?空気も気分も軽くなっただろ?」
明さんは、ニカっと笑いかけてくれた。その笑みは、大変落ち着く感じでした。
「ええ」
それまで最悪だった気分が嘘のようにスッキリしていました。
(そういうの、あまり信じていなかったのですが…)
明さんの祈祷は真剣そのもので、その真剣な姿も素敵で信用に値するものでした。
帰り際、2時間分のお金・4千円を払おうとすると…
「千円でいいよ」
「え、でも…」
「中学生の4千円は、大人とは価値が違うからね。それに呪われていたのも、君のせいじゃないし」
「え?」
「人を呪うのはどんな理由があるにしろ、相手が悪い。まぁ、生き霊にも死霊にもきっちり説教しておいたけど…。あの感じだとまた取り憑かれると思うから、またおいで。何回も説教したら、そのうち改心すると思うからさ。本人に直接言うより生き霊に説教する方が効果がある。あいつら、勝手な感情で君に取り憑いて害をなすなんて、本当に自分勝手だと思ったよ! 生き霊を飛ばすのもしんどいし、副作用もあるのになぁ。〝もう自分勝手にとりつくな!〟って何度でもガツンと言ってやる!言ってやりたい!だから君がいつでもここに来れるように、良心的な値段にしておくよ」
「ふふ…」
私は笑ってしまいました。自分勝手な感情をぶつけてくる人達に本気で怒ってくれているのも、とても嬉しかったです。
「いい顔で笑うようになったね。同じような状態になったらまた来て。何度でも根気よくお祓いするし」
明さんは、私を安心させるように笑いかけてくれました。その笑顔には、心底こちらを安心させる真心がこもっていて…。
私は、(ここに来て本当に良かった)と心から思えたのです。
それから、言われた通り何度もここに来てお祓いを受けました。そのうち生き霊に取り憑かれることは少なくなっていったのですけど。
そして、生き霊や死霊や呪いに苦しんでいる人、心から相談を求めている人をみつけたらここを紹介するようになりました。
(だって、周りに大人の人はたくさんいるけれど…私がこんなに信頼していて、慕っている異性は他にいないんですもの)
まあ中高生の相談事は、恋愛相談が主なのですけどね。
(そっち方面の相談事は苦手そうだけど💦)
お客さんは、よく当たると大喜び。
それは、おいておいて…私も困っている人がいたら相談に乗れるような人間になりたい。
(その第一歩として、いい式神を産もう)
斎王代の仕事も、陰陽術が絡んでいる。その仕事にきちんと意味を持たすためにも、明さんに陰陽術を習おうと考えています。
紀香ちゃんも晴子さんも明さんに陰陽術を習おうとしていますけど。
(のりりんも晴子さんも斎王代を務める私のガードを固めてくれようとしている気がする)
あの子達は、本当にいい友達です。親友と言ってもいいくらい。この関係はずっと崩したくない。でも…
(負けないんだから!)
「何に?」ですか??………いろいろです。
女子会みたいなものもするようになった。そこには〝りほ〟ちゃんも混ざっているのですけど…
〝りほ〟ちゃんの9000年の物語は、まだまだ聞き足りない。そういうのも動画にしてみたらいいと思う、今日この頃です。
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