第38話醍醐の花見2
「夜叉神明の分身体です」
〝双子?〟
〝いやいや。双子はいないと、この前言っていたぞ〟
「陰陽術・【式紙分身】やで」
晴子が補足してくれた。
「うん。〝幽体離脱〟ってギャグは、やめておくけどね。分身体にこの結界内を案内してもらいます。本物の醍醐寺では期間限定でしか公開されていない所もバッチリ紹介するんでじっくり楽しんでね。その後、晴子さんのチャンネルで特技大会するんで、そちらも引き続き見てね」
〝晴子姉さんチャンネルはよ〟
〝早く特技大会みたい〟
「準備もありますし」
これは、沙織ちゃん。
「〝りほ〟ちゃんのノリも上げなきゃだし」
こっちは、紀香ちゃん
「九尾のノリって、酒やん!というわけで明お兄ちゃん、時間稼ぎよろしゅうお頼もうします〜」
「了解。陰陽師兼古美術商の実力、見せてやるぜ!」
「行ってくるが良い♪」
〝りほ〟は酒瓶を嬉しそうにかかえて、俺の分身体をえらそうに送り出した。
♠️
「さて、醍醐寺は京都市伏見区醍醐東大路町にある真言宗醍醐派の総本山です。世界遺産です。今、僕たちがいる場所は金堂の前です。せっかくなのでここから案内していきますか」
みんながお重を広げて談笑しながらお弁当を食べている場面から満開の枝垂れ桜を映し、金堂を映す。
金堂といっても、金箔が貼られている訳ではない。
〝世界遺産!〟
〝枝垂れ桜がめっちゃ綺麗〟
〝お弁当食べたい〟
〝そこに混ぜろ〟
「…金堂の中も映していきましょう。まぁ、僕が作った結界だから撮影しても大丈夫ですが、本物は撮影不可です。この建物自体も国宝です」
金堂の中を映す。仏像とその両脇に2台ずつの銅像がある。
「中央におかれているのは、薬師三尊像です。病気を癒し、苦しみを除く仏様ですね。その左右には四方を守護する四天王立像が配されています」
〝薬師如来、優しそうな顔しておられますね〟
〝四天王立像は2体ずつ躍動感が違う?〟
「お、いいところに気づきますね。前に配置されている2体は動きや表情が大きく、後ろの2体は静かなイメージです。前の2体は後から再建されたのかもしれません。作風が明らかにちがいますし、制作者及び作成年代が異なるように見受けられます」
〝はえー〟
〝解説、いいね〟
「金堂の解説はこんなところでしょうか?次は、向かいにある五重塔の方へ行きましょう」
レジャーシートの前を通り、五重塔の方に向かう。五重塔も周囲を満開の桜に囲まれている。
「この五重塔は951年に建立されました。後醍醐天皇の菩提を伴うために建立された京都最古の塔です。高さは38メートル。内部は公開されていません。まあ、本物ではないので映しちゃいますけどね」
内部を映す。両界曼荼羅、真言八祖を表した壁画などがある。
〝公開されてないものを映しとる〟
〝どうやって下調べしてんの?〟
「陰陽術です」
ステルス性の高い式紙で、醍醐寺を隅々まで調べた。長兄の技だ。もはや俺に潜入できない場所は無く、調べられない場所もない。
〝一言で片付けおった!〟
〝秘術ってやつか〟
〝スパイかなんかか?〟
〝怖っ〟
「あはは。…次にいきましょう」
〝ごまかしやがった〟
さらに東へ向かう。
「これは、観音堂です。西国三十三観音霊場第11番札所となっています。」
中を映す。
「ここの観音様は
ん?子授け…なにかひっかかるなぁ。まぁいいや。
弁天池や無量寿庵なども映して仁王門へ向かった。
「この仁王門は豊臣秀頼が再建しました。仁王様がなんとなくコミカルな感じです」
〝ホントだ〟
〝鎌倉時代のマッチョな感じと違うね〟
♠️
伽藍エリアから出て、三宝院エリアへ向かう。
「三宝院は醍醐寺座主の居住する本坊として醍醐寺の中核をになってきました。現在の三宝院は、豊臣秀吉が1598年に催した〝醍醐の花見〟を契機として整備されました。その庭園は秀吉自ら設計したもので国の特別史跡・特別名勝に指定されています」
〝醍醐の花見〟
〝全国から1300人の女中を集めたんやんな〟
〝淀君(茶々)と京極殿(京極竜子)が秀吉から酒盃を受ける順番を争ったんだよね〟
「よくご存知で。酒盃を受ける順番が側室の地位の高さを示すから、プライドをかけて女の戦いを繰り広げていました。それを前田利家の正室である松の方が、〝次は唯一の客である私が受けるべきです〟と言って、うやむやにしたんですけど(苦笑)。三宝院では抹茶が飲めるスペースもあるんで、そんな場面をイメージしながらお茶を飲んでもいいかもしれませんね」
春夏秋冬を表したふすまとか、仏師・快慶の最高傑作と言われる弥勒菩薩坐像(非公開)も映す。
最後に豊臣秀吉が自ら設計したとされる庭園も映した。
♠️
三宝院の向かい側には、霊宝館がある。そこも全体像だけサラッと映す。
「霊宝館には、仏像・絵画・工芸品など10万点以上のお宝が保存されています。10万点も紹介しきれないです。順次公開されているので、是非見に来て下さい」
〝説明、投げやがったー!〟
〝適当!〟
「さて、特技公開タイムの準備ができたようなので、今回の僕の配信をここで中断して、晴子チャンネルに繋ぎます。引き続き晴子チャンネルを見てねー。チャンネル登録、高評価よろしくお願いします」
式紙分身は本体と情報を共有できる。本体達の状況も把握しているのだ。
〝京都を観光しているみたいでよかった〟
〝醍醐寺、国宝とか重要文化財とか多すぎよな〟
〝廃仏毀釈の時に、寄付とか募って寺宝を守り抜いたのよ〟
〝詳しい〟
〝次は晴子チャンネル見に行くかー〟
〝今回は何を見せてくれるのか楽しみ!〟
〝ここの人達、何気に多才よな〟
〝ビジュアル最強!〟
「ありがとうございます。では、すぐに会いましょう。じゃあねー」
晴子チャンネルと言う形で、まだ配信は続くのだ。
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