第39話醍醐の花見3

♠️結界術・【千本桜桜醍醐寺】観音堂前ステージ

「はいはーい。晴子姉さんチャンネルどす。今日は明おじ様の結界内から中継しとります。明お兄ちゃんとコラボしとりますえ」


〝桜が満開〟


〝結界って…お寺?〟


〝人いなくね?〟


「醍醐寺を模した結界どす。明お兄ちゃんの〝陰陽師チャンネル〟からこちらに来られた方達には、説明不要どすな」


〝陰陽師チャンネルも見てたよー。結界内を案内してた。〟


〝式紙分身!〟


〝幽体離脱!〟


〝醍醐寺の桜、綺麗。文化財もたくさんあるし〟


〝式紙分身? 幽体離脱?〟



〝陰陽術だよ〟


〝なにそれ〟


〝あとで見るといい。夜叉神明の〝陰陽師チャンネル〟。切り抜きも作られるかも?〟


「そうどすな。こなたの動画も切り抜き推奨どす。今日は明お兄ちゃん以外にもゲストを呼んでますし。特技大会も開くので」


〝暗黒物質を披露するか〟


〝あー、前に言ってたやつね〟


「暗黒物質ちゃうわ!最近は料理も少しずつ練習しとるし」


〝披露はよ〟


「今日は料理しまへん。お花見弁当や。こなたも、ちょっとくらい手伝ったし。ほら」


 お重を映す。


〝むっちゃ美味しそう〟


〝食べたい〟


〝で、どこを手伝ったの?〟


「俵むすびを作ったり、盛り付けしたり」


〝盛り付け、センスいいじゃん〟


〝香道とか花道もやってるもんね〟


〝おかずも作ろうぜ〟


「余計なお世話や!…ゲストを、紹介します⤴︎明お兄ちゃんのなじみ客の沙織ちゃんと紀香ちゃん。それと2人のご家族達どす。明お兄ちゃんの式神・〝りほ〟もおるよ」



「「「どうもー」」」


〝可愛い〟


〝女の子達は衣装が一緒〟


〝中華服? 時代劇に出てきそうな〟


〝高校生くらいかな?晴子姉さん以外にも女子大生が1人混じってそうだけど〟


「その方は、紀香ちゃんのお母はんどす。鈴さん」


〝えー…〟


〝女子大生にしか見えん〟


〝つまり、晴子姉さんと同じくらい?〟


〝しかも、紀香ちゃんと同じ服(中華風踊り子衣装)着てるし〟


「一緒にパフォーマンスするんやで」

 晴子は苦笑しながら言った。


「家で練習してたら、〝私もやるー〟って言いだして」

 紀香ちゃんも呆れ気味に言った。


「お仕事大変そうなのに、よくやるよね」

 沙織ちゃんである。


「娘とのスキンシップは、大事よ!」

 これは、鈴さん。


〝で、なにやるの?〟


「満開の桜をバックに〝さくらさくら〟の編曲を私達が演奏し、〝りほ〟ちゃんが踊りまーす〟

 紀香ちゃんが元気よく宣言してくれた。


 ちなみに俺は、撮影係だ。


「まずは、道具を出さんと⤴︎。【陰陽術・無限収納アイテムボックス】オン・アビラウンケン・ソワカ!」


 晴子の背後から虚無の穴が出現。


 そこから出てきたのは…


 琴や、笛、鼓などの和楽器の数々。あと、中華舞踊で使うショール(?)みたいな物もでてきた。


〝アイテムボックスって…〟


〝ゲームか?〟


〝陰陽術便利すぎ〟



「ふっふー」

 晴子は誇らしげに大きな胸を張って、揺らした。


♠️

 満開の桜をバックに、最前には〝りほ〟が中華風のショール(?)をもってたたずんでいる。

後ろの中央には、琴の前に座る晴子。その傍らには、和笛を構えた鈴さん。鈴さんの左にはつづみを構えた紀香ちゃん。右端には、鼓をかまえた沙織ちゃんも立っている。


「これから披露するのは、胡旋舞という回転を多様する唐時代の踊りです。〝りほ〟が言うには、楊貴妃ようきひだった時代によく舞ったそうです」


 動画を撮りながら俺が捕捉した。


 楊貴妃もこいつだった。というか…唐の時代に贅沢三昧して中国にいづらくなって、日本に渡ってきたのだろう。


〝楊貴妃、こいつかー〟


〝え、どういうこと?〟


〝九尾の狐、推定8千歳以上〟



♠️


 満開の桜をバックに、〝さくらさくら〟の編奏曲が流れる。

 そして、最前で軽やかに色っぽく舞う〝りほ〟。


 唐代の詩人・李白、楊貴妃を詠んでいわく、


[雲には衣装を想い、花には容を想う。春風、かんを払うて、露華ろかこまやかなり。もし、群玉山頭に見るにあらずんば必ず瑶台月下にて逢わん]


[意味…美しい五色の雲を見ると、楊貴妃の美しい衣装を思う。牡丹の花を見ると、楊貴妃の容色を連想する。今、春風が沈香亭の欄干らんかんに吹き渡り、華についた露がしっとりと輝いている。これほどの美女には、仙女が住まうとされる群玉山の頂でなければ、ぎょくで造られた美麗な後宮の月下くらいでしかお目にかかれないだろう]


〝りほ〟の舞を見ていると、そんな詩を思い出した。楊貴妃は、歌舞音曲など芸能に秀でた傾国の美女。その踊りは、まさに【仙女の舞い】と形容できる。



〝ほえー、美しい〟


〝中華舞踊って、動きとか表情とかがなんか色っぽいよね〟


〝わっかるー〟



 パフォーマンスが終わった。

 みんな、おじぎをしている。


 見ていた沙織ちゃんのご両親たちは、大喝采である。


「今日の動画は、ここまでです。面白かった、気に入ったと言う方は、チャンネル登録や熱い高評価をよろしくお願いします。あと、僕たちの目的は、本来、怪異譚の収集にあります。怪異にあったと言う方は、下記のウイッターにDMしてください。よろしくお願いします」


 シメにはいる。


「次もコラボするえ。沙織ちゃんが斎王代を務める葵祭の実況は明お兄ちゃんの陰陽師チャンネルでやるし、こなたのチャンネルでは、沙織ちゃんと紀香ちゃんを葵祭までに徹底的に磨きますえ」


〝磨く?〟


「今でも充分、可愛いのやけど。…肌とかぴちぴちやしっ! とにかく、お化粧の仕方や肌の磨き方や香の合わせ方とかを伝授するんや。斎王代も、鬼姫も、京都の看板を背負っとるよって、容姿も徹底的に磨かんと。葵祭の時には、二人とも正真正銘のはんなり京美人はんやで」


〝さすがは、晴子姉さん〟


〝晴子姉さんも京都の看板やで〟


〝ちょっとポンコツだけどね〟


〝どんまい〟


「ポンコツは、余計や! どんまいって、なんどすか?」

 キレキレというか、キレ気味のツッコミ。



「〝りほ〟ちゃんが仲間に入れて欲しそうに、そっちを見ているよ」

 俺がちゃかす。


「見とらんわ! あるじこそ混ざりたいのじゃろ」


「俺は、化粧とかしないし!」


「〝りほ〟ちゃんも色々知ってそう」

 これは、沙織ちゃん。



「明さんにも、お化粧しちゃおうか?」

 いたずらっぽく言ったのは、紀香ちゃん。


「やめい」

 断固、拒否。

 昔の貴族は、男も化粧していたのかもしれないが。



「じゃあ、そろそろ」

 晴子がみんなに目配せした。



「「「「「ご視聴ありがとうございました。また見てね!」」」」」


 今日の配信が終わった。みんな、仲いいな。


 葵祭まで、あと一ヶ月。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る