春の陰陽師

第36話東洋と西洋(親父視点)

 我が名は六道烈りくどうれつ。六道家の現当主である。

 一子相伝の六道流陰陽術。その当主であるということは、儂も跡継ぎ争いを勝ち抜いたということ。


 【蠱毒こどく】という術がある。毒虫を集め、殺し合わせて最強の毒蟲をつくる術。

 六道家の家督争いも正にそれ。


(ぬるい。ぬるすぎる)


 これまでの家督争いはぬるすぎた。それぞれの者達に才能がなかったわけではない。生きることに固執する長男。狂悪な次男。そして、膨大な陰陽力を持ち、精霊や妖魔に愛される気質を持つ三男。この者達の争いは、何かを生むかもしれないと期待したのだ。


(だが、何も生まれなかった)


 六道がなぜに一子相伝なのか、根本から学びなおせ。


 六道の悲願。それは、〝六道の六道による六道のための世界を作ること〟。これぞ、666!

世界を根本から壊して作り直さなければならぬ。そのために必要なのは、破壊神にして創造神。


(何故、儂が聖書を読んでいるかだと?)


 破壊神にして創造神というのは、すなわち、唯一絶対神のこと。

 東洋。とくに日本は、絶対神というものを嫌う。陰陽道の考えからしてもそうだ。

 陰と陽がどちらに偏ってもだめで、調和が取れた状態こそよしとする。——これを中道ちゅうどうという。


(中道とやらで、日本は栄えたか?)


 陰と陽が混ざりあって調和する。それではダメなのだ。


 東洋と比較して、西洋は発展した。産業革命も起きた。

それは何故かと考えるために儂は古今東西のあらゆる書物を読んだ。

 答えは、〝二律背反〟。陰と陽の徹底的なぶつかりあいこそが発展の鍵ということなのである。


(西洋にはそれがある。あった)


 異端審問、十字軍、無神論、ルネッサンス、産業革命…。


 西洋では同じ神を信じる者を異教徒と断じ、殺し尽くそうとしておいて泥沼の絶滅戦争を仕掛けた。それに飽きると〝神は死んだ〟とか言い出す始末。


(その極端さこそが革新を生むのだ!)


 人の子として生んだ三兄弟にその極端さはあったか?



 狂気をもつ次男も、生きることに執着する長男も、六道を滅ぼそうと願う三男も中途半端だった。

 中途半端な者達が争っても中途半端な物しか生まれない。


(カエル魔人までなっておきながら、呆気なく死におって…)


 特に失望したのは長男である。インドラジット——神に匹敵するほどの力を得たにもかかわらず、勝利を掴めず、後になにも残さなかった。


 勝った三男も力を得ただけ。六道を滅ぼした後のビジョンもない。

 まあ、ビジョンがあったところで世界を左右するほどの力を得たわけでもない。


(これで、六道を継がせる?)


 いままでは、そうであったかもしれない。


 だが…。


(最強には程遠い)


 最強とはなんだ? ミサイルに、核兵器に、勝てるのか?? 世界・80億人の民をひれ伏せられるのか?



(今度は、人の子など作らぬ)


 闇を凝縮しよう。陰陽道の陰そのものの存在。材料は集め続けている。効率が鍵だが…。試行錯誤を繰り返している。


 明が六道をつごうが滅ぼそうがどちらでもよい。


(汝の欲することを為せ!)


 だが…儂と儂が作った最後にして最狂最悪の子を食ってからにしてもらおう。


 最終的にはこの世のすべてを食らいつくし、人も核兵器も妖魔も八百万の神も仏も悪魔も西洋の唯一絶対神すら食らいつくすことになるであろう絶対的な闇。———その名も〝わざわい〟。


 陽の極地が唯一絶対神ならば、〝わざわい〟は陰の極地といったところか?


 ——明よ、陰の極限を超えてゆけ。


「ふはっ。ふはは…ふはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっつつつ!!」



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         [後書き]

次回は、醍醐で花見をしながら配信する回です。【醍醐の花見】——元祖は天下人・豊臣秀吉が全国から1300人余りの女人を集めて開いたイベントです。 

 こっちの花見は何人の女性が集まるのか…。こうご期待。


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