第34話リベンジマッチ

「なんぞ、気分がええのぅ。…今なら神にでも勝てる気がする。わらわは、瀕死の状況から回復すると飛躍的に強くなる戦神の末裔だったかの? いや、わらわこそが戦神じゃ」

 〝りほ〟が立ち上がって誇らしげに言った。



「調子が戻ったようで何より。【回復呪】と【加速呪】をかけたんだ。それでインドラジットに速さで負けることはなくなったと思う。試してみてくれ。いっておくが、俺の陰陽力はほぼ空だからな」


「【加速呪】でワテの速さに追いつけたら苦労はないと思うけどなぁ」

 長兄が馬鹿にしたように呟いた。


「主の術じゃからなぁ。性能が並外れておるに決まっておるわ。どれ…」


 刹那…


「ぐはぁ」

 長兄の顔が殴られて苦痛に歪んだ。


「ふむ。先程との速さの落差に驚いたようじゃな。主の【加速呪】を侮るから、そうなる。大したものじゃ」


「呪をかける前の10倍くらいの速さになっている。その速さにすぐ適応するお前もさすがだけどな。それで速さは互角以上のはず。あとは…」



「手数じゃな。そらそらそらそら」

 〝りほ〟得意の尻尾ラッシュ。それにナーガも7つの蛇頭でラッシュする。


 というか…長兄にやられたことをそのままやりかえしてる。


(負けず嫌いな奴め)


 長兄はみるまにズタボロになっていく…


 速さが互角以上になったのなら手数というか尻尾数や頭数で〝りほ〟と〝ナーガ〟が近接戦闘で優位に立つのは明白。



「ぐぅ…速さが互角になったからって、調子にのんなやー! …はぁっつつつ」

 気の解放。


「ぐわっつつつ」

 調子にのって攻めかかろうとした〝りほ〟とナーガは圧倒的な気の衝撃波を食らったように吹っ飛ぶ。


「ハァハァ」

 長兄は一瞬追撃しようか迷ったようだったが、むしろ後ろに飛び退り〝りほ〟から距離を取った。

 接近戦の不利を瞬時に学習したらしい。


 というか…今はこの空間自体が俺なんだ。気の解放とかやめろよ。俺までビリビリしただろうが!




♠️

 (距離をとってどうするのか?)と見ていると…


「【六道流滅殺術第2門・暗黒あんこく雷神らいじんきゅう】。雷速の矢をくらうがいい!」

 黒い稲妻で作った弓矢を引き絞り、射った!


 黒雷の矢は途中で6本に分裂して稲妻の速さ(秒速10万km。光の速さの3分の1相当の速さ)で〝りほ〟とナーガに飛んでいく。


(いかん)


 この近距離で雷速の矢が避けれるはずもなく…〝りほ〟とナーガに3本ずつの雷矢がさっさったように見えた。





「あー、びっくりした」

 〝りほ〟は言葉と裏腹に呑気な声で言った。



「ぐわっつつつー!…どういうことや?」

 長兄は、驚愕の表情。身体には、3本の雷矢が刺さって消えた。雷撃をくらったように…いや、雷撃そのものをくらって硬直している。




「ここが俺の結界だということを忘れていないか?」


「…ワイと九尾やナーガの位置を入れ替えたんか!」


「そういうこと」

 俺の結界内では、相手の位置を入れ替えることなど容易にできる。物理法則など、有って無いようなものなのだ。



「…それは、ずるいんとちゃうか?」


「死合にずるいとかあるか?」


 〝生きるべきか死ぬべきか?〟問題はそれだけだ。



「まぁええわ。…それなら、おまえの得意術で勝負してやる!【回復呪】…それから【多重式神分身呪】」

 自分の雷撃をくらってズタボロになった長兄が完全回復し、6体に増えた。


「数できたか…なら、わらわは…ナーガよわらわの武器となれ。意思をもち、伸縮自在・変幻自在の毒武器となるのじゃ」


「最終決戦や!」


「望むところ」

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