第29話六道怪(長兄視点)
「ぐほっつつつーーーー」
今日何度目かわからないがトイレに張り付く。
ビチャビチャと黒い物を吐くようになったんや。尻尾が生えていてぬるぬるしてる。
オタマジャクシのように見えるけど、気のせいやんな?
便器の中で元気に泳いどんねんけど。
わいの名前は
宿屋の若女将と一流企業の御曹司が結婚して宿屋を継ぐとか言い出したらしく婿方の祖母から依頼されて、破談するよう若女将を呪った。
そうすると、土御門の跡継ぎ娘が出てきて解呪しようとしてきた。
(土御門の小娘に解ける呪いやないし)
案の定、解呪に失敗して、逆に呪われることになったんや。
そうなると晴子め、明に頼りおった。
(SNSで繋がったらしいが…陰陽師がやることか?)
陰陽師は、陰の存在や。表に出てくるのが間違っとる。
しかも、明がこんな厄介な呪い返しをしてくるとは。
体内に寄生する呪いだと?陰陽力が封じられた状態で、腹の中に寄生した呪物にどうアプローチするんや。
開腹しろとでも?
手術で医者に呪物は取り除けない。開腹には医者や医療チームが必要だが、解呪にはあくまで陰陽術師が必要なのである。陰陽術師が立ち会う手術など、もちろん聞いたことがない。
(悔しいが、親父に相談してみるか?)
♠️
「失礼します」
「怪か。何用だ?」
なんの感情も感じられない声。
これだから話しかけるの遠慮しとんねん。
「腹の中に寄生する呪いにやられまして陰陽力も使えません。どう祓ったらいいか助言をもらいたい」
「カエルか。ふふ…明め。えげつない呪いをかけるようになったではないか」
一目みて、だれからどんな呪いを受けたか当てる。その眼力は、大したもんや。
しかも、なんで何気に嬉しそうやねん。
「どないしたらよろしいでしょう?」
「第三者にカエルだけを殺す呪を体内へ流し込んでもらうしかあるまい。
「父様にお願いしてもいいでしょうか?」
「儂か?本気で打ち込むが、よいのか?内蔵が壊れても知らんぞ。丹田も壊れて、陰陽術師としての生命線たる陰陽力がねれなくなってなるじゃろうな。陰陽術師の丹田に寄生させているのが、なんとも、その呪いのやらしいところでな」
こちらがゾッとするほどの冷笑。
「ご冗談を」
冗談だと言ってくれ。
「儂が冗談をいうと思っておるのか?六道の嫡男が腹違いの末弟に呪われて儂を頼ってきおって。腹に一撃いれんと気が済まんわ!」
その一撃が腹への本気の浸透勁とか、鬼か?
浸透勁とは、中国拳法の極意である。気のこもった打撃を100%体内に伝えて内蔵を破壊する技だと言えばよいか?つまり、カエルが寄生している丹田という器官ごと破壊しようというのである。
「まぁ、逆の発想もあるにはあるけどな?教えてほしいか?」
逆の発想?絶対、ろくでもないことだ。知ってる。
「ご教示願います」
「自分で、考えろ!と言いたいところじゃが…。まぁ、考えついても自分でやろうと思わんじゃろうな。くくく。逆の発想と言ったら、呪物が吸い取る以上の陰陽力を呪物に与えてやることよ。全力で陰陽力を与えてみよ。〝死中に活を求める〟これができたら、浸透勁はやめておいてやる。今回だけはな」
「どれだけ陰陽力を注げば?」
「知らぬ。最悪、死ぬほどかもな」
「死ぬほど」
「逆に考えろと言うたじゃろ。カエルを祓うのではなく、お前がカエルになるんじゃと考えたら、いくらでも陰陽力を注げるじゃろ。呪物を逆にのっとるのよ。六道の嫡男が妖になる。愉快じゃ。
むしろ、みんな妖になってしまえ。世の中にそれくらい妖があふれたら、陰陽師のありがたみがわかるじゃろ?くくく。くくくくくくくくくくくく…」
「は、はぁ…」
俺、絶句。
狂ってやがる。
「大妖になったら、お前を使って
楽な選択肢が一個もねぇ💦
えっと…
ここは前提というか、将棋盤そのものをひっくり返そう。
(詰んだ将棋は、そうするに限る)
そのためには…
「明に会ってきます」
「ふん。呪った本人。しかも、いびり倒した腹違いの弟にすがるか。六道の嫡男も落ちたもの」
「なんと言われても、結構」
「明にお前の言うことが通じるかのぅ?どちらかと言えば土御門の小娘のほうが陰陽師として明と気があうじゃろう。忌々しいがな。まぁ、せいぜい明を説得せい。明に呪いを解かすという驚天動地なことを成し遂げられたらお前を見直すこととしよう」
見直す?この言葉はつまり、見損なわれていたわけか?
土御門の小娘の話題がでるあたり、俺が呪われた経緯も知っとる?
まぁいい。将棋盤をひっくり返す驚天動地なこと、やってみようではないか!
〝成せばなる 成さねばならぬ 何事も〟
こうして、俺は腹違いの弟である明に会いにいくことにした。
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