第26話コラボで解呪

 前金を受け取り、動画の撮影が始まった。


「ご無沙汰しておざります。陰陽巫女の晴子どす」

 顔に包帯を巻いた巫女服姿の女性が挨拶した。


〝晴子姉さん、久しぶり〟


〝包帯、どうした?〟


「依頼者の呪いを解こうとして逆に呪われました⤵︎」

 イントネーションは関西風。テンション低め。


〝晴子姉さん、痛ましい。綺麗な顔してるのに〟


〝包帯、とってみて!〟


「おぞましきものを見ることになりますえ?」


〝ナ◯シカにでてくる姫様?〟


〝土御門の人間が呪われるなよ〟


〝やっばー〟


〝ゾンビとりがゾンビになってしまったのかー。このポンコツ陰陽巫女!〟


「〝ポンコツ陰陽巫女〟はひどい!包帯をとる前に紹介します。呪いを解いてもらうために呼んだ、こなたの親戚どす」


「どうも、夜叉神明です」


〝しぶめのお兄さんでてきた〟


〝土御門じゃないんだ〟


〝土御門に解けない呪いを親戚に解けるの??〟


「この明お兄ちゃん、いや、正確には5才年上のオジなんどすけど…解呪に関しては、こなたを上回る天才どすわ」


〝明お兄ちゃん、呼んどるー!〟


〝頼りにしてる感じがビンビンする〟


〝姪っ子のピンチに颯爽と駆けつけてきたヒーロー〟


「いや、有料どす」


〝有料w〟


〝お仕事だった〟


〝しかも、ちゃっかりコラボしとるw〟


〝土御門にかけられた呪いを祓うのおいくら?〟


「…百万円どすな」


〝高い?〟


〝そんなもんじゃない?〟


〝女子大生に請求するなら高いな。晴子姉さんなら払えるだろうけと〟


「この明お兄ちゃん…持たざる者からはあまり搾取しないが、持ってる者からはたくさんもらう主義だそうで」


「解呪に失敗したら呪われる。リスクが高すぎて、割のいい仕事とは言い難いです」

 俺の主義をバラすんじゃない。


「失敗したら、晴明神社に婿入りですわ」


〝まさかのお婿さん候補?〟


〝陰陽師同士の結婚…サラブレッドが生まれそう〟


〝両親どっちも呪われてるけど〟


〝陰陽師の家系、ピンチじゃん〟


「婿入りせずに済むよう頑張りますよ」



「…複雑な気分どす」


〝振られとる〟


〝失敗したほうがいいような雰囲気〟


〝そんな悲しそうな顔しないで〟


〝晴子姉さん、曇らせるなよ〟


〝晴子姉さんを奪ったら許さない〟


〝晴子姉さんを曇らせたり、奪ったりしそうな男を呪う方法を教えて下さい〟


「それ、呪われるの俺ですよね? その方法は、教えられません」

 苦笑しながら言う俺。


 これが、ネットスラングで言うところの〝ユニコーン〟か。怖っ!



〝晴子姉さんの呪われた顔みてないからなー。おぞましきもの言うてるやん〟


♠️

 晴子がシュルシュルと包帯をとっていく。


〝うわっつつつーーーー!〟


〝フジツボ?〟


〝ふっフジツボがー! フジツボが顔半分にびっしり寄生しとるー〟


〝特殊メイクだろ?…特殊メイクと言ってくれ〟


〝フジツボが寄生するの膝の皿の裏や〟


「特殊メイクではあらしません。試しに一つを強引に引き抜こうとすると…」


「キギャーあぁぁっつつつ!!!」


〝何、この叫び声!〟


〝この世の物ではない〟


〝マンドラゴラ、引き抜いた?〟


〝死ぬじゃん〟


〝痛くないの?〟



「無茶苦茶痛いどす。というわけで…明お兄ちゃん、助けて!」


〝晴子姉さんというより妹キャラじゃん〟


〝弱ってるの新鮮〟


〝呪い解けても、そのキャラでいい〟


〝夫婦配信はよ〟


〝はぁ? 夫婦配信?? 呪われろ〟


〝お前がな〟


「はぁ…まず呪いの特定からしようか。そいつの本性、なんだと思う?」


〝フジツボ〟


〝なんかの卵〟


〝虫かな?〟


「法華経を唱えると蛇になった文献があったし、蛇では?」


「当てずっぽうかますと、俺も解呪に失敗しそうなんだが」



「どうすれば、ええん?」


「秘密道具をだしてやるよ」


〝ドラ◯モン?〟


〝アキラモンじゃん〟


〝なになに…早くだして〟


〝アキラモーーーン!〟


 みんな、食いついてきた。


 俺は、もってきた袋をゴソゴソと漁る。


「…てってれーーー♪」


〝てってれーーー♪言いやがったw〟


〝逆に可愛い…かも?〟


〝おちゃめ〟


〝無しよりの有り!〟


〝あり、おり、はべり、いまそがり!〟


〝五段活用w〟


〝水晶玉〟


〝水晶占いかよ〟


「水晶玉…どすな」


「そう。で、こうする。水晶玉よ、呪いの本性をうつしたまえ! オン・アビラウンケン・ソワカ」 

 印を結び、呪を唱える。


 すると、水晶玉が眩く光りだした。


〝眩しい!〟


〝眩しい!〟


〝そんなに光るなよ〟


「何か見えましたん?」


 見えたのは、2つの体節に8本の足。


「ああ。そいつの本性は…蜘蛛だ!」


「蜘蛛!」


「そ。蜘蛛の卵だよ、そいつら!…で、晴子さんにも働いてもらおうかな?」


「今、呪われていて陰陽力が空っぽどすけど」


「香を調合してもらおう。蜘蛛が嫌う香を。それなら陰陽力関係ないし」


「へぇ。香なら任せておくれやす」


 あとは…りほに頼んで、蜘蛛の天敵でも生んでもらうとするか。鳥とかかな?

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