第24話ツンドラ地方の住民
「あっ明おじ様、ご機嫌麗しゅう。別に会いたくてたまらなかったわけやおへんえ」
俺の仕事場である寺町屋の二階で、おしゃれな帽子をまぶかに被ったまま晴子が怒っているように俺と目も合わせず挨拶した。
帽子と長い前髪に隠れていて、目、見えないけど。
全体的な雰囲気としては、白一色のコーデに、血のような真紅のルージュ。中背ながら、なんというか…ホラーにでてくる
京言葉の嫌味なお嬢はんが来ると思ったら、京言葉でツンドラ地方の原住民みたいな子が来た!!
(そっちからコンタクトとってきたんじゃん)
俺の隣には、なぜか沙織ちゃんがしかめっ面で立っている。
いや、ここでバイトをしてるし、お茶を入れてくれて茶菓子も持ってきてくれたんだけどね。茶菓子は晴子のおもたせ。
ちなみに、晴子が持ってきたのは、鼓月の桜餅だ。
(ふむ)
季節は春。桜餅は春という季節にぴったり。そして、鼓月というのは京都発祥の老舗。
静岡に本店を持つ駿河屋や東京に本店を持つ虎屋の和菓子を絶対にチョイスしないあたりが、なんとも京都人らしい。
(何のプライドか知らないが)
洋菓子など持ってこようものなら「ハイカラはんどすなぁ」である。←もちろん〝(伝統や格式を重んじる)京都のことを何も知らない田舎者め!〟という嫌味。
まぁ、沙織ちゃんがいれてくれる絶品のお茶と相性もいいから鼓月の桜餅、大歓迎だ。
「晴子さん、お久しぶり。その雰囲気は、呪われたのかな?」
なんともめんどくさい雰囲気だったので、単刀直入に切り込んだ。
正直、「ぶぶ漬でもどうどす?」と言いたいくらい。←京言葉で、〝帰れ!〟っていう意味。
「つっ!」
「帽子くらいとったらどうですか? つんけんしたお姉さん」
沙織ちゃんも見かねたように言った。
「そちらは…明おじ様の助手はんどしたな。確か…」
「はじめまして、
「これはご丁寧に…こなたは、土御門晴子です⤴︎よろしゅうおたのもうします。帽子どすけど…顔に包帯を巻いてまして、明おじ様が仰せのように、呪われとりますんや。帽子と包帯をとったら、おぞましきものを見ることになりますえ?」
やんわりした京言葉で凄むなよ…
ツンドラと京言葉って…ミスマッチというか、不協和音というか、違和感が強烈なのである。そして、格好は八尺様。セリフは、ナウ◯カに出てくる敵国のお姫様なんだぜ?
昔は、照れ屋で引っ込み思案な感じのかわいい子だったのに…何に呪われたら、こんな風になるんだか…
(どうして、こうなった?)
今回は何に呪われているのか、皆目検討もつかない。
ステルス性の高い呪いというか。
「差し支えなかったら…何にやられたか、見せてもらえ無いかな? なんなら、沙織ちゃんには、席を外してもらうけど」
「大丈夫。田鶴屋の小娘なんかに負けないんだからっ」
何故に口調が変わった? 京言葉もどっかにいったし。
負けないって、何に??
「私、ここにいていいんでしょうか?口調も変わったし…。なにか地雷を踏んだんじゃ?」
沙織ちゃんが、若干ひいている。
「地雷? 本人がいいって言ってるし、いいんじゃないか??」
「地雷は、動画の〝お茶を毎日入れて欲しい〟みたいなくだりかな? こっちは、〝明お兄ちゃんのお嫁さんになるー〟って言った仲だし!」
「はい? …というか、京言葉キャラどこいったんですか? しかも、明さんの呼び方、〝明お兄ちゃん〟だったんですね?」
「ぐっ!」
呪い以上に、なんでこの2人が初対面からヒートアップしているのかわからない。
沙織ちゃんが鋭いツッコミいれてるの、新鮮なんだけど。
「じゃあ、呪いを見せてもらおうか」
俺は、慌てて話を元に戻した。
「「はい」」
♠️
晴子は、帽子をとってシュルシュルと包帯を外し始めた。あらわになっていく全貌。
前髪まで上げる。
「ひっ」
普段、清楚で
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