第23話DM

拝啓


夜叉神明さま


 突然のDM、失礼いたします。私、土御門晴子つちみかど せいこと申します。

お久しぶりと言うべきなのかしら?そう。遠縁の晴子です。

晴子は二十歳で大学2回生になりました。あきらおじ様はいかがお過ごしでしょうか?


 あなたの動画を見てDMいたしました。呪いの収集をされているとか。是非、会って相談させてもらいたいのですが。あなたの活動のお役にも立てるかと。その日時と場所の希望を返信してもらえると嬉しいです。


追伸


 I Tubeなら私も動画を配信致しております。登録者数30万人。動画一回あたりの再生数は5万件越え多数。これだけでも会う価値があるかと。色よい返事をお待ち申します⤴︎



♠️明視点


(晴子め。今さら、何の用だ?)


 〝登録者数30万人。動画一回あたりの再生数は3万件越え多数〟のくだりはセールスポイントであると同時に、受け取りようによっては自分の優位性を誇示しているだけなようにも読める。

 最後の⤴︎は京言葉であることを示しているのだろうが。


 まぁ…土御門と六道がいい関係とも言い切れないことから、こちらに接触してきたこと事態がかなり驚きなのだが。

 それらのことをコミで、この文章を読み解いてみよう。


 つまり…


〝大変不本意ですが、あなたを頼ってあげます。この私から連絡があったことを喜び、本家の跡継ぎである私の窮状きゅうじょうを救いなさい!〟ってところだろう。


(自分の優位性をわざわざ誇示するのを忘れないところが、なんとも〝本家の跡継ぎ娘〟様だな)


 このDMからどんなキャラに育ったのか、だいたい想像もつくが…

 昔は「明お兄ちゃーん」って慕ってくれていたのだけど。


(〝本家の跡取り娘様〟がどんな窮状に陥ったか? については、興味がある。あいつ、陰陽師としての才覚もかなりあるほうだから、そうそう窮地におちいることもないと思うが…。土御門のネームバリューで登録者数30万人…ぐぬぬ)


 俺は、あのDMをどんな感じで返すか考えを巡らせるのだった。


♠️

拝啓


土御門晴子様


 お久しぶりです。あの小さかった晴子さんも、もう二十歳なのですね。御壮健そうでご活躍もされているよし、大変喜ばしいことです。会って旧交を暖めるのも感慨深いものかもしれません。


 場所は寺町商店街内、本願寺の前にある古美術商〝寺町屋〟の2階でどうでしょう。日時については、そちらのご都合に合わせます。



♠️晴子視点


 私は、土御門晴子。陰陽道の名門・土御門の跡取り娘にして、晴明神社の巫女である。


 土御門のネームバリューを使って陰陽チャンネルを開設し、バズったのは狙い通りだったものの…そこから依頼された仕事でどじった。


 解呪を失敗すると術師も呪われるタイプの呪いだったのだ。


 しかも…自分が呪われてみれば、その仕掛け主は六道の人間だと分かった。


 これを、〝六道を出奔した放蕩息子〟こと、明お兄ちゃんに解かすとか、


(なんて悪女)


 別に…明お兄ちゃんの解呪の才能が天才的だからとか、陰陽師の中で唯一自分と波長が合うとか、昔、なついてた明お兄ちゃんに久しぶりに会いたいとか、そんなことでは全然まったく無いんだからねっ。


(これが世にいう〝毒をもって毒を制す〟なんだからっ!)


 そんなことを考えながら、私は日時を指定するメールを返した。


(さて…どんな服で、どんな紅をさし、どんな香をつけて会いにいこうかな?)


 まぁ…どんな格好をしようと、今の私には映えないのだが…⤵︎



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