第17話誕生日会

 大嶽丸を討伐し、紀香ちゃんの家に戻ってきた時間は深夜の4時すぎだった。


 そこから、各自3時間くらい熟睡。


 その後、紀香ちゃんも陰陽術の眠りからも覚めさせた。


「おはよう」

 俺は目覚めた紀香ちゃんに挨拶した。


「おはようございます?」


 熟睡から目覚めた紀香ちゃんは寝ぼけているのか状況を掴みかねている。


「大嶽丸、みんなで討伐してきたのよ。もう大丈夫!」


 紀香ちゃんを安心させるべく声をかけたのは紀香ちゃんの母親たる鈴さんである。


 紀香ちゃんは、起き上がって鈴さんに抱きついた。


「お母さん達が無事で本当によかった!」

 自分のことより母親と俺たちの無事をまず喜ぶ紀香ちゃん。


 本当にいい子だと思う。


「胸の傷も消えたはずだよ」


「本当にありがとうございます!どうお礼をしたらいいか?」


「仕事だからね。みんなを守りきれてよかった」


「今日は学校や仕事に行ってから紀香の誕生日会をしないとね。沙織ちゃんも呼んでくる?」


「うん。心配してくれていたから大丈夫だった伝えて、お礼も兼ねて誘ってみる」



「明さんもこられます?」


 鈴さんが俺に聞いてくれた。


「いいんですか?」


〝ぶぶ漬けでもどうどす?〟とか、【逆さ箒】とかたてられたりしない?

 これらは、京都人特有の〝帰れ〟っていう暗喩。〝いけず〟ってやつだ。誕生日会に〝ぶぶ漬け〟とか出されてみろ、泣くぞ!

あー、〝ぶぶ漬け〟ってゆうのは湯漬けのことだ。冷や飯にお湯をかけただけの代物で、お茶漬けでもなければ出汁漬けでもない。


 これ、食べると答えたら「なんて図々しいお人でっしゃろ?」って陰口叩かれることになるからな。〝ぶぶ漬けでもどうどす?〟の答えは〝せっかくですが、またの機会に〟と言って、さっさと帰ることだ。


「もちろん。九尾と酒盛りして、旧交を暖めないといけませんし、京風おでんも作ってくださるんでしょう? 大嶽丸の解体は、私と九尾でやりますよ」


 あー、大嶽丸の肉を調理するの解体からなんだよなー。

 人型の妖の解体は気が重かったんだよ。鬼の解剖に興味ないからなー。学術的にやってみて、本とか書くべきなのかもしれないが。


(それを淡々と請け負ってくれる鈴さん、すげー)


 魚とか捌くのと同列なんだぜ? 鬼の解剖というか、解体作業。


「そうしてもらえると助かります」


「大嶽丸の解体?」


「今日は、〝鬼肉京風おでん〟よ?」


「なに、それ?」

 紀香ちゃんは、どんびきである。


「普通の牛スジ肉や鳥肉の入ったやつも別に作るよ!」


 鈴さんは微塵も気にしてなさそうだが、紀香ちゃんに共食いさせるわけにもいくまい。


「さぁ、朝ごはんを食べて仕事や学校に行きましょ!」


帰ったら、JKの誕生日会かぁ。誕生日プレゼントは何を買っていったらいいんだろう? 沙織ちゃんに相談してみようか?一緒に買いにいってもらったり?


 あと、誕生日会の時に今後のことも相談しないと。今回のアフターサービスは、大分、大掛かりな物になりそうだ。


 沙織ちゃんと紀香ちゃんに手伝ってもらうことになるかもしれない。


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