第15話誰の陰謀だ?

 俺の結界は、平安時代末期の平安京を模した物だ。


 もともと、荒廃していたわけだが…大嶽丸の雷や炎や竜巻でより悲惨な状況になっている。

 具体的に言えば、雷と炎であちこちが焼けこげ、竜巻で建物がぐちゃぐちゃ!

 まさに怪獣が暴れ回った後のそれだ。結界に引き入れていなければ、現実の京都がこうなっていた所だった。


(これが平安時代に名をはせた鬼の所業か!)


 一時休戦モードになっている今、あたりを見渡し驚愕する。


「話を聞く前に陰陽力を分けてくれんか?」

 空から降りて来た〝りほ〟が俺の耳元て囁いた。


「どうして?」

 傷や体力ならば先程、全快させたはずだが?


「今日の【晩ごはん】…いや。再び戦いになった時、いつもより強い眷属を顕現させなければならないじゃろうからな」


 なるほど…いつもの【晩ごはん】は俺の精力であるわけだが…今日は陰陽力で我慢してくれるわけか。


 晩ごはんは、ちらし寿司や甘酒ではなかったのか?とは、言いっこ無しである。


「OK」

 俺が、了承すると…


 〝りほ〟は、俺にガバッと抱きついて首もとに齧りついて来た。


 ……。


(首から陰陽力を吸うのか)


 ——吸血鬼みたいなやつ。


 ちゅうちゅう陰陽力を吸われながら…


「話とは?」

 大嶽丸が重い口を開いた。


「お前の封印を解いたのは誰だ?目的は?」


「ふむ?」


「お前、自然復活したわけじゃないだろ?誰かがお前の封印を解いたばすだ。それに…契約の仕方があくどすぎる。強引に願いを叶え、一方的に対価を取り立てる。そのやり方は鬼の流儀ではあるまい。誰かの陰謀じゃないかと思うんだが…」


 この話をしている間も〝りほ〟は陰陽力をちゅうちゅう吸ってる。


(ちょっと吸いすぎ!)


 首から陰陽力を吸われるの実は結構、気持ちいいし「ひゃっん」とか「もう駄目ー」とでも声が出そうなのだが、真面目な話の最中にそんな女子みたいな声だせないし。



「ふむ…16年前に我の封印を解いてくれた者がいるな。確かに。力をためるために神社に来たものの願いを叶え、対価として人間を食えとも言われた!」


「そいつに仕えているのか?」


「まあな。六道の当主とかだったかな?わが主は。我の立場は、そこの九尾と同じようなものよ」


 六道の当主…クソ親父かー!


 16年以上前から何をやってやがる?

 大嶽丸以外にも強力な妖を集めて式神にしているのか??



「お前の他にも似たようなことをさせられている奴がいるのか? 何のためだ?」


「知らぬ! 我は契約を遂行するのみ!!  さぁ、戦いを再開するとしようか?今度は5体に分裂して戦ってやる! 虫けらみたいに飛びまわられぬようにな!」


 知らぬだと? そこは、知っておけよ。重要なことだぞ。

 


「最後に一つ聞いていいか?」


「なんだ?」


「封印を解かれてから契約詐欺で何人食った?」




「……10人から先は覚えておらぬ」


 10以上、数えられない奴だー!


「10人は食ったわけか。滅するには、十分な答えだ」


 1人でもだめだが。

 契約詐欺はもっといかん。血闘の結果ならば、相手も死ぬ覚悟の上だろうからまだいいが…。



「ならば、わらわの眷属を見せてやろう!」

 やっと俺の首から口を離した〝りほ〟が俺に抱きついたまま自信ありげに宣言した!


 刹那、俺は脱力感に襲われてフラつく。〝りほ〟め。俺の陰陽力を3分の2以上も吸いつくしやがった!

 残りの陰陽力では、【蘇生】を使えない。強い眷属を顕現させるためとはいえ…死んだら終わりだぞ?


 まぁ、それだけ大嶽丸が強敵ということだろうし、数千から数万体に分裂しないだけマシだろう。


 記録では、3万の軍勢が相手だったからそれに見合う数だけ分裂したのだろう。


 倒し方は、【神通の鏑矢】を放つと一本が数万に分かれて分裂体の顔をことごとく打ち抜き、残った首を田村麻呂がなげた【ソハヤノツルギ】で打ち落としたのだ。


(そういえば…【神通の鏑矢】も【ソハヤノツルギ】も持ってない💦)



 今回は、三人相手だから数千から数万体になっても、意味は薄いと判断したのだろうか?


 とにかく、大嶽丸の【分裂】…最終形態だ!これで決着をつけよう!!



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