第1話

「こっちは片付いたけど、そっちはどうだ?」

「こっちも片付きました」

仲間のが最後の一人を斬り捨てたのを見届けたあと、この班のリーダーである小泉さんに伝える。

俺が所属する団体組織、夜蝶は特異能力を持っているもの、そしてその中でも戦闘向きな特異能力を持つものたちが集まってできた集団だ。

今から150年ほど前、俺たちが住んでいるこの地球とは別世界のところ、人によってはあの世だったり魔界などと言っているやつがいるが、まあそれはどうでもいい。

とにかく、そこから悪鬼と呼ばれる鬼が出現した。

悪鬼は日本に鬼をばらまいた。

そして同時に人々に能力を与えた。

日本中にばらまかれた鬼は各地を襲い、人々に恐怖を与えた。そこで立ち上がったのが今の夜蝶のもととなる人々だ。

その人たちは慣れない能力に悪戦苦闘しながらも必死に戦い何とか日本の破壊は免れた。

しかし、その時鬼をみんな倒したのかと言われればそうではなく、まだまだ日本各地に点在している。そして悪の根源たる悪鬼は最初に現れた時以来、姿を全く見せていない。

悪鬼がなぜいきなり現れ、人々に特殊能力を与えたのかはいまだにわかっっていない。

それでも鬼の撲滅と悪鬼の退治を目指して夜蝶は存在する。


「龍弥ーそろそろここ引き上げんぞ」

「今行きます。咲夜、行こう」

「はーい」

一緒にこっちで鬼と戦っていた咲夜に声をかける。

咲夜が夜蝶に入ったとき指導したのが俺だったからか懐いてくれている。

「今日も大活躍でしたねー龍弥さんは」

「そうでもないだろ。つか今日の敵が雑魚だっただけだ」

「龍弥さんは自分が強いってこと自覚してくださいよ」

これは夜蝶のメンバーによく言われる言葉だが、毎度毎度どう反応したらよいか困ってしまう。

これは自分の手によって磨かれたものではないと分かっているからだろうか。

「いいからさっさと行くぞ。また小泉さんに怒られたいのか」

「うわっ、それだけは勘弁してもらいたいです。小泉さん怒るとほんと人柄変わるんだもんな」

咲夜は根っからのお調子者気質なのだが、それが仇となり、いつか小泉さんに怒られていた。それがどうしてもトラウマとなっているようで小泉さんを話題にだすとすんなりいうことを聞くようになった。こちらとしては大助かりな話だ。




「うわあ、美味しそう!龍弥さん!みてくださいよ!」

隣から聞こえてくる咲夜の感嘆した声が聞こえる。

いつもなら騒がしいと思う程度なのに、今日はやけ頭に響く。周りの隊士たちも連れだって騒いでいるからだろうか。

どこで鬼が現れるかわからない世界では、夜蝶が一定の場所にとどまることはほとんどない。

それは定住できないということだから、激しい頻度で宿は変わる。そしてもちろん場所によってご飯も変わるのだからそのご飯が豪勢だったら喜ぶのは当たり前と言えるだろう。

それにしても、だ。

周囲とかもう関係なく頭が痛い。

この感覚はひどく久しぶりな気もするのだが、思い出せない。

「…さん?龍弥さん?」

「ん、どうかしたか」

「さっきから何回も呼でるのに全然反応返してくれないから。…って龍弥さん顔真っ青ですよ?大丈夫ですか?部屋戻った方がいいんじゃ…」

他人からみて真っ青だと言うのなら相当やばいのだろう。

「じゃあそうさせてもらうわ」

「わかりました!小泉さんには伝えておきますね!」

「助かる」

部屋に戻って布団に横たわるとすぐさま意識を失った。





やたら騒がしいな、と感じつつなんとなく嫌な予感を感じて目を覚ます。

頭痛はすでに治まっていたので事態を確認すべく、ふすまを開けるとちょうど咲夜がいた。

「何があった?」

「小泉さんが、いなくなったって。見当たらないって。普段はなんの連絡もなしにいなくなるような人じゃないから…」

これが新たな災厄の始まりだった___





























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鐘が聴こえた @hi-a21

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