暗い川が眼下を過ぎてく。あっという間に。

 これからぼくたちはどこに行こうというのか。暖かいリゾート・アイランドではないだろう。

「飛行機に乗りたかった」

「いいや。あまり好きじゃないんだあの感じ」

「あたしも」

「何で戻ってきたの」

「呼ばれてるような気がしたから」

「あたしね、自分の名前が嫌いだったの」

「結ぶ女なんて」

「よく言われるの。結ぶだけで結ばれないって」

「そんなことないよ。いい名前じゃない」

「ずっと思ってた。ゆめってひらがななんだって」

「ひらがなならわかりやすいのにね」

 電車のデッキの上。

 僕たちは外の暗い景色を見ていた。あの夜と同じように。

 窓には二人の姿が映りこんでいた。おたがいを見つめながら。

「やっぱりお前は宇宙人なんだ」

「僕が恋する相手は宇宙人に決まってる」

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夢想家 阿紋 @amon-1968

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