噛々、神々、髪々
禁俗口承案内 backnumber◼️◼️◼️
【禁俗口承案内】
著:等端りん
またお会いできて嬉しいです。
読者アンケートの結果が良かったおかげで、再びコラムを書かせていただけるはこびになりました。
しかし打ち切りの危機は未だ去っていないので、前回と同じような形式で綴ろうと思います。
私には墓までもっていくつもりの話が多すぎるので、ここに少し置いていきますね。
ご自由に、持っていってください。
さて。
皆さんは、自分自身を鼓舞する
輝かしい栄光への自負だったり、周囲の応援に感化されたり、自らの矜持のためだったり……もちろん多種多様十人十色の人それぞれだと思います。
かつて、遊女たちは
ある国の美しい未亡人は、亡き夫に操を立てるべく再婚話を蹴散らすために自らの鼻を切り落としたと伝えられています。
都市型テロリストの方がケジメと称して身体の一部を切り取ることもありますね。
遭難や漂流などの極限状態に置かれた場合でも、いきるために自らを傷つけることを選択するケースも多いです。
どうしても叶えたい願いがある場合、時として、人間は痛みを許容できる生き物なのです。
覚悟の証明です。
そして覚悟は自身の行動を変え、そして周囲までも変えていきます。
それにより、身の丈以上の結果を出すことも可能です。
もちろん、度が過ぎれば身を滅ぼすことに繋がりますが、誰だって、人生のどこかのタイミングで、理性的な思考ではどうにもできない状況というものに遭遇しますよね?
この問いかけは、まだその機会に出会っていない方からは一蹴されてしまうのですが、実際に遭遇された方からは一定の支持をいただいています。
一世一代、己という存在の真価が試される機会です。
もう経験された方は、おつかれさまでした。
どんな立ち回りをされたとしても、私は決してあなたを否定しません。
自らが選び取った未来以上に、最善はないのですから。
まだ未経験の方は、ご健闘をお祈り申し上げます。
未経験の方に向けて、ひとつ、ご案内したいのが今日の話です。
また前置きが長くなりそうですね、すみません。
実は、私はもうすでに前述の機会を経験しています。
その中で、どうしても叶えたい願いのために痛みを選択して、現在、身体の一部がありません。
こうして皆さんに向けて発信できていることからも分かるとおり、命に別状があるような部位ではありません。
実際に私と会えば、すぐに分かるような欠損です。
もうこのコラムも担当させていただいて長いですから、オフで私とお会いしたことのある方ならご存じかと思います。
ここでひとつ、思い出して欲しいことがあります。
世に出回っている呪いの技法は、肝心要の部分が抜けた賞味期限切れのものだと。
現代社会において、昔ほど『呪い』は必要なくなったのかもしれません。
この国は周囲を海に囲まれた島国で、周囲との関わりがとても重要でした。
村八分にされたら、文字通り生きていけません。なぜならば、逃げ場がないから。
コミュニティ中の調和を護るため、様々な理不尽がまかり通っていました。
自己と他者との境界が曖昧で、それゆえに『呪い』は重宝されます。
実際に、憎い相手に手を下してしまっては一族郎党にも悪影響ですから。
過剰なまでの罪科は非情にも思えますが、しかしそれが、互いを牽制して平和を守るための手段であったのです。
対して、現代はどうでしょう?
どんどん自己と他者との分離が進み、核家族という言葉も生まれるほど人間同士の繋がりは小さい単位になっていきます。
そうなると、色々な選択肢のハードルが低くなるでしょう。
自分の行動が他者にどのような影響を与えるか、なんて、現代人になるほど思考は短くなります。
『呪い』なんてまどろっこしい手段をとるまえに、さっさとその場から去ってしまうか自らで手を下すか、選択はそれぞれですが、これはかつてはなかった、モノの考え方だと思います。
かといって、『呪い』が失われたわけではありません。
現代人だから、という理由で、自己と他者がきちんと分離できているとは限りませんから。
しかし、時代の流れに応じて需要は確実に減りました。
それに伴い、細部が受け継がれないままに口承だけが残る呪いが増えてきます。
このあたりは、皆さんとたくさん議論を交わしましたよね。楽しかったです。
どうして、意味をなさない『呪いの技法』が、世に出回るのだと思いますか?
それは、カモフラージュとしての『呪い』をばらまかないと、好奇心に駆られた者が本物の呪いを探索しかねないからです。
多くの人間が、押すなと言われたボタンを押したがるでしょう?
賞味期限切れの呪いが出回っているということは、賞味期限が切れていない呪いがまだどこかに現存しているという論拠でもあります。
私は、本物の呪いの技法を見つけ、そして実行し、望み通りの結果を得ました。
その代償は決して小さくはありませんでしたが……、日々を絶望の中で五体満足に生きることと、希望を感じながらリスクを背負って生きることと、どちらを選択するかは当人の自由です。
私がみつけたやり方は、必ず痛みが伴います。
しかしそのぶん、必ず願いが叶います。
引用元は私自身です。
もしも、どうしても叶えたい願いがある方がいれば、読者の皆さんにだけこっそり教えてあげます。
私が背負っている荷物を肩代わりしてくれる方は、今回の読者アンケートにご自身の連絡先と共に『トウニンハギ』と書いて下さい。
こういう公共の場では色々と規制があって、なんだか抽象的な表現に終始してしまいましたが……もしご連絡いただければ、私はどこにでも赴いて詳細をお伝えしますので。
あんまり抽象的でも真実味がないと思うので、ひとつだけ実際の地名を挙げて終わりにします。
この村が。いま、もっともトウニンハギの力が高まっている場所です。
便宜上『呪い』と称していますが、単純に自分へのおまじないだと思ってください。
さて、このあたりで規定文字数ですね。
またご縁があれば、お会いしましょう。
きっともう、お会いしない方がいいのかもしれませんが。
それでも、またお会いしましょう。
等端りんでした。
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