* 1-5-2 *
西暦2036年 秋
セルフェイス財団 イーストサセックス州支部 代表執務室にて
『……え?元々の名前、GEGP379の意味について?』
あの日、財団の代表執務室でラーニーを茶化していた私はふいに受けた質問でそのようなことを言った。
彼は思い詰めたように真剣な眼差しで名前の真意を問いただして来たのだ。
なるほど。そういう勘の良さも持ち合わせているわけか。
薬品の秘めたる意味と意図に気付いたというところだろう。
彼は言った。薬品の持つ効能は異常だと。元々どういった経緯で開発され、どのような効能を持つ薬品であるのかを教えて欲しいとも。
さぁて、それは出来ない相談だ。
だって約束したでしょう?そういう“裏事情”には一切触れるな、と。
でも、まぁ良い。真実をほのめかした後で、彼の整った顔がどのように苦悩で歪んでいくのかについては興味がある。
私は面白半分で答えてあげることにした。
『きゃははは!気になるのならー、私が直々に教えちゃおう☆
グリーンゴッドと名付けられる前の薬品の名前。それはね、作った場所+成長促進剤の頭文字に3つの79を合わせたもの。
つまりは元々は『作った場所+growth promoter #797979』というのが正式な名前なんだなー、これが!
ん?数字の意味?
カラーコードって知ってるぅ?
#797979の示す色はねー、ふふ♡
太平洋の島でー、たくさん見たでしょう?
人間に使った時は、もぉっと面白かったんだから☆』
数字が示す色。
太平洋の島。
人間に使った。
ミクロネシア連邦で起きた薬物汚染の事件は世界のメディアを通じても報道されていたのだから当然彼も知っている。
知っているからこそ、3つのキーワードを耳にした彼の表情はみるみるうちに歪んでいった。
面白い。
想像通り過ぎてなんと楽しいことだろうか!
知った時点で共犯だ。もう後戻ることも逃げることも叶わない。
今、この時こそ世界に名だたる巨大財閥、セルフェイス財団が〈世界の敵〉になった瞬間だ。
両手で頭を抱えた彼は苦悩に満ちたまま表情で全身を強張らせ、しばらく下を俯いたまま言葉一つ発しようとはしなかった。
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