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“とあるデータベース”参照による情報開示

 閲覧者:アンジェリカ・インファンタ・カリステファス


MDCCLXVI - File code:GESW-GP379 TYPE:Classified

【新型環境モデル改善農業薬品 GEGP379】

 グラン・エトルアリアス共和国 特別兵装 第379-1番

 製作者:技術開発顧問 アビガイル・ウルカヌ・サラマドラス


 土壌改良及びテクスチャ効果により荒廃した土地に新緑が蘇ったように“見せかける”効能を持つ薬品。

 セルフェイス財団への譲渡により〈CGP637-GG〉へと改称。


 本薬品を散布した大地は、本薬品が予めプログラムとして持つ自然イメージの中から地域に適応するモデルを特定し、テクスチャ効果により投影させるものである。

 テクスチャとして投影しているとはいえ、立体構造物、或いは立体造形物として物理的に実在するものとして合成する為、人間の感覚や機械での視認上では、本物の自然がそこに存在しているという認識にしか至らない。


 土壌改良については、土地本来が持つ栄養源を全て断ち切り、有毒汚染状況を形成。

 改良というのは、〈本薬品の効能を発揮する上で必要とされる為に必要な土壌〉へと改変を加えることを意味しており、一般的な認識における改良とは意味が異なる。

 一度土壌へ染み込んだ本薬品は長い年月をかけて海洋へと進出した上で、さらなる汚染を広げると見込まれている。


 本薬品によって投影、創造された自然の果実などは、実験過程に生成された〈合成薬物グレイ〉(コード:GESW797979参照)と同等の効力を有する。

 動物が接種した後の作用としては、嘔吐、呼吸器障害、筋肉痙攣、急速な全身神経破壊、幻覚、幻聴、播種性血管内凝固症候群などが表れた上で確実に死に至る。

 グレイ同様に作用の発生後から死亡までの時間は短く、副作用症状発症後の解毒方法は存在しない。

 尚、色に対する感覚の全てが喪失し、モノクロでしかものが見えなくなる後天色覚異常 1色型色覚〈全色盲〉を発症することもグレイと同様の効能である。


 本薬品の影響によって生成された果実や植物を摂取した動物が、特殊状況においてグレイの副作用を発症せず仮に生き残る状況が発生したとしても、本薬品の持つウイルスベクター特性から、遺伝によって子孫にも奇形や先天性障害などの影響を与える。


 本薬品の開発目的は環境改善を目指したものではなく、戦略的環境汚染による敵戦力の掃討を目的としている。

 野営を行う敵軍に対し、緑豊かな自然を投影した景色を見せ、そこから得られる食糧などを通じて毒汚染を広げることを目的とする。


 簡易仕様1:土壌環境改良及びテクスチャ投影・立体物創造

 簡易仕様2:広範囲の環境汚染、動物に対する有毒作用

 簡易仕様3:ウイルスベクター特性による遺伝情報伝達

 使用方法:粉末散布

 化学式:非開示とする

 生成コード:MDCCLXVIデータベース上の各項目を参照のこと


 講評:

 戦略的意図を以って開発された本薬品の効能は非常に優れたものであると認められる。

 イングランド地域における実験の結果、散布後の経過観察データの収集が得られたことで目的とする性能基準は十分に満たしたものであるとの確証が得られた。


 また、副産物であるグレイの発見をもたらした功績も大きい。

 生産コストからみる兵器評価としてはこれ以上ないものと言えるだろう。

 

 本運用に際しては昆虫型ドローン(蝶型ドローン〈プシュケー〉を想定)に搭載した運用が推奨される他、薬品そのものをパンドラにて移送後、目標地点で破壊することで一斉散布する方法も推奨される。



〈GEGP379評価試験〉

 試験ステータス:実施完了

 承認日:西暦2032年11月

 承認者:総統 アンジェリカ・インファンタ・カリステファス

 評価:S+ 兵器運用に向けた大量生産を実施すべし

 実験地:イングランド ダンジネス地区

 実験日:西暦2035年11月から2037年4月まで

 最終データ更新:西暦2037年5月



MDCCLXVI - File code:CFF-00 TYPE:Open

【セルフェイス財団】

 自然環境保護、保全を推進する世界有数の巨大財閥。

 初代当主エドワード・セルフェイスによって名声を高め、一代にして莫大な財を築き上げた。

 過去に別の財閥によって実施された〈緑の革命〉になぞらえた〈新緑の革命〉と呼ばれる環境改善プログラムを実施し功績を上げており、このことから二代目当主であるラーニー・セルフェイスは〈新緑の革命者〉と呼ばれるに至った。


 世界各地の環境保護プログラムへの参加、或いは環境保全への資金供出を惜しまない姿勢は国際的にも高い評価を得ている。



MDCCLXVI - File code:C19432 TYPE:Secret

【新緑の革命 事件】

 新緑の革命事件とは、西暦2037年4月に発覚したセルフェイス財団の環境破壊隠蔽事件の総称である。

 当事件は彼らが2035年に発表した〈夢の農業薬品 CGP637-GG〉に関して、ダンジネス国立自然保護区での試験運用中に地球環境に大規模な悪影響を与えることを認識していたにもかかわらず、それを公表せず、世界中で始動していた運用試験実験をそのまま実施しようとした事件である。


 環境保護を訴える団体の世界筆頭となる存在が、地球環境を破壊するほどの悪質な効能を持つ薬品を使用したという事実について、自らの利益保持や地位保持の為に隠蔽しようとした事実は、事件の細部を知る組織からは非常に重く受け止められた。

 尚、この事件の全貌を知る組織はイギリス政府と一部の同盟国、国際連盟の一部機関、世界特殊事象研究機構という限られたものとなっている。

 これは、事件に関する公表権を保持していた世界特殊事象研究機構が、これまでのセルフェイス財団の地球環境に対する貢献の大きさを踏まえつつ、彼らが社会的信用を失墜することになった場合の国際社会に与える影響の大きさを鑑みて忖度した結果であった。

 万一、セルフェイス財団が倒れるようなことになれば、世界経済に与える影響も計り知れないものになるという事実に基づき、国際連盟やイギリス政府とその同盟国も同様の見解と立場で〈公表を控える〉という決断を支持して受け入れた。



 事件が明らかになる発端は、セルフェイス財団がCGP637-GG運用問題とは別の問題で世界特殊事象研究機構の調査チームをイングランド国内へ呼び寄せたことにあった。

 この事件において、最初に異常を確認したのが機構の調査チーム〈マークת〉であったのだ。

 当初、マークתはセルフェイス財団からの依頼を受け、ダンジネス国立自然保護区の実験施設とは異なる一画で起きた自然の異常再生に関する調査を行っていた。

 荒れ果てていたはずの大地が、何も手を加えていないにも関わらず一夜にして豊かな自然環境を取り戻した現象についての調査である。

 セルフェイス財団が機構へ調査を依頼した背景には、当該の異常再生現象が〈実はCGP637-GGの運用と何か関係性があるのではないか〉という懸念を持っていたからではないかと見られている。

 つまり、財団はCGP637-GGの持つ悪質な効能を隠蔽しようとしていた反面、〈自分達に非の降りかからない方法〉で世間に薬品の持つ効能の異常さを公表し、世界各地で実施されようとしていた試験運用を中止させようとしていたのではないかと受け取ることも出来る。

 機構は【薬品の効能を暴き、実験を即時中止するように勧告させる為】の仲介役として声をかけられたという見方が強い。ただし、この推測については財団当主であるラーニー・セルフェイスの口から語られてはいない為、どこまでも推測の域を出ない。


 ラーニー・セルフェイスの思惑通りであったかは定かでないが、マークתは調査の中で実験施設付近の環境モデルデータに不審な点があることを確認。

 依頼された調査と並行してセルフェイス財団管轄のCGP637-GG運用試験管理区域の調査を行った。

 結果として、CGP637-GGを使用した場合、自然環境に甚大な悪影響を与える可能性を見出し、完全なる事実解明の為にイギリス政府へセルフェイス財団に対する強制調査権の発動要求を行い、財団がひた隠しにしていた薬品の真実は明かされることとなった。



MDCCLXVI - File code: WAPRO - CSR TYPE:Open

【強制調査権】

 世界特殊事象研究機構が持つ強権。

 機構は世界各国との条約・協定を個別に締結しており、政府機関との協定に基づき治外法権に基づく強制調査権を発動することが出来る。

 機構の持つ治外法権とは通常、災害時、政府機能を喪失した国家に対して協定内容に基づき、当該国の法律や憲法に定める手続きや規定に従うことなく、事前許可なく国境線の越境や入国、災害救助活動の実施などを可能とすることを指す。

 この強権には入国や災害救助活動を除く例外の権利として、世界に対して悪影響を及ぼす可能性のある緊急性のある特殊な事象が発生した際、当該国の警察や政府、司法、憲法などの干渉を受けずに独自の法を持って“自由に調査する権利”も含まれており、どちらかといえば名称が示す通り〈治外法権を適用した自由な調査権利〉を示すものという色が濃い。


 強制調査権の発動種類は緊急性に応じて複数に渡る。

 レベル1からレベル3までのランクがあり、数字が上がるごとに緊急性の高いものとなる為、承認手順の省略が可能となる。


・レベル1:対象となる当該国政府の承認を受け、国内の限られた地域に対して発動する

・レベル2:対象となる当該国政府の承認を受けて当該国内全域に対して発動する

・レベル3:対象となる当該国の承認手順を省き、機構の判断のみで発動する


 ただし、レベル3のように機構の判断のみに基づき権利を発動した場合、後に不干渉の原則を締結した第三者機関である国際連盟を通じて〈権利発動の正当性〉の審議が為される場合がある。

 この審議で順当足る正当性が認められないと判断された場合、国際条約に締結された罰則を機構が負うこととなる。



MDCCLXVI - File code:PL-G04 TYPE:Secret

【アルビジア・エリアス・ヴァルヴェルデ】

 出身:リナリア公国

 誕生日:No Data

 身長:167cm


 リナリア公国七貴族において自然環境保護・国家発展整備・食糧自給を司る〈エリアス〉の家系に生まれ育った一人娘。夢想・歓喜の花言葉を持つ〈ネムノキ〉を名に持つ。

 ジェイドグリーンに輝くアースアイを持ち、光が反射するとセラドン色を淡く映し出すプラチナゴールドの特徴的な髪色をしている。

 イベリスが王妃としての責務を果たせなくなった場合の為の保険として〈第二王妃〉の立場に立つはずであった人物で、本人達の意向を無視した政治的に定められた新国王の妾でもある。


 本人は公国の未来や自身の立場、世界の成り行きに対する興味関心は薄く、ただ周囲に満ちる自然の美しさをありのままに感じていられればそれで良いという性格の持ち主である。

 故にレナトやイベリス、マリアやロザリアといった他の子供たちとの関りも非常に希薄なものであった。

 自然を愛する以外のことに興味を示さず、関心を示さず、口数も少なく、孤独を愛し、常に眠そうに虚ろな表情をしていたことと、第二王妃の立場を与えられるはずであったことを踏まえて〈眠りの妃〉と呼ばれていた。


 彼女は公国七貴族の子供たちの中では最も大人の雰囲気と容姿の美しさを持つ少女である。

 眠りの妃と呼ばれるに至るほど他者との関りを敬遠してはいたが、話し掛けられれば礼儀正しく自然な応対をする一面も持ち合わせている。


 領土拡大戦争レクイエムの影響で公国が滅亡した後、およそ千年の時を経て当時の肉体のまま現代のイングランド ダンジネス国立自然保護区へ顕現した。

 以後は近くのリド=オン=シーで暮らす老人ジェイソン・モラレスの元に身を寄せてひっそりと暮らしていたが、セルフェイス財団が環境保護の為という口上で試験運用を始めた新型農業薬品の〈真の効能〉にいち早く気付き、使用を止めさせるために自らの異能を用いて財団へ個人的な攻撃-ダストデビル-を仕掛けていた。


 彼女が死後に獲得した超常的な力、現在までに確認されている異能については下記の通りである。


 

1.成長促進

【成長にまつわる可能性を即時に具現化させる】能力を所有する。

 いわゆる〈強制的な時間の早送り〉を実現する力のことである。


 自然界に存在する動植物から無機物、人間を含めたありとあらゆるものが能力の対象となる。

 例えばまだ熟していない果実を〈その果実が将来迎える熟した状態〉を手をかざすだけで実現することが可能であり、果実を熟した以上の状態にする為にさらに時を進めて〈腐敗した状態〉を意図的に作り出すことも可能。

 その他、怪我をした部位に対し〈自己治癒力で再生した未来の状態〉を即時に実現させることで、一瞬のうちに完治させてしまうことも出来る。

 或いは、実現させようと思えば幼少の人間を一気に将来迎えるであろう老人の姿まで変えてしまうことも可能と見られる。

 アイリスの持つ〈時間遡行〉とは真逆の効力を持つ、時間操作・時間制御の大能力である。


 補足として、この能力はあくまで〈正常に時間を経過させた場合に、そのものが辿る未来の状態へ変化させる能力〉である為、例えば人間の四肢が切断されたものを復元したり、時間経過では修復が不可能な状態に壊れたものを再生することなどは出来ない。


2.塵旋風〈ダストデビル〉

 塵旋風(ダストデビル)と呼ばれる現象を故意に引き起こす能力。

 塵旋風とは、ある程度開けた地上付近の大気が渦巻き状に上空へ立ち昇る現象を指し示すが、通常それらが周囲の建造物などに対して著しい被害を与えることは無い。

 だが、彼女の操る塵旋風は非常に特殊で、大規模な竜巻に匹敵する出力と、鋼鉄をも切り裂く風の刃-かまいたち-を伴った凶悪なものである。

 確認されている事象として、彼女はこの能力を用いてセルフェイス財団が管理するダンジネス国立自然保護区内のCGP637-GG運用試験施設を一瞬にして完全に破壊したことが挙げられる。


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