第2節 -Re:Maria ~天使と悪魔~-
* 1-2-1 *
グラン・エトルアリアス共和国
エトルアリアス要塞 -アンヘリック・イーリオン-より
“とあるデータベース”参照による情報開示
閲覧者:アンジェリカ・インファンタ・カリステファス
MDCCLXVI - File code:C18620 TYPE:Open〈一般閲覧可能な情報〉
【難民狩り事件】
〈難民狩り〉事件とは西暦2031年11月末から12月末にかけて、中央ヨーロッパのハンガリーとセルビアを結ぶ国境沿いで起きた、難民キャンプで生活する難民15人が殺害された事件である。15人はそれぞれ全員が別日に別々の場所で1人ずつ銃で額を撃ち抜かれ殺害されていた。
厳重な監視体制を敷く国境付近での犯行にも関わらず、殺人現場が一切監視カメラや監視ドローンに記録されないという前代未聞の事件でもあった。
この事件の犯人は世界中の捜査関連機関において指名手配されていた〈ライアー〉と呼ばれる男で、両国国境に敷かれた二重の鉄フェンス沿いに難民キャンプを築いていた人々を1人ずつ連れ出しては無差別に殺人を行っていたとみられる。
同年12月25日、ライアーの身柄は南方の町リュスケからほど近い草原の中で確保されたが、発見された時には既に死亡していた。
死因は拳銃による自殺で、指名手配の包囲網から逃げきれないと悟ったことで自ら命を絶ったのではないかという見方が大勢である。
ライアーが同事件の犯人であると後に断定された理由は、遺体発見現場に残されていた自殺に用いられたとみられる拳銃の型と、犯行に用いられていたとみられる拳銃の弾の口径などが一致したことによるものであった。
同時期、国際連盟主催による総会が同国の首都ブダペストで行われており、その議題が〈難民問題について〉であった為、難民だけを標的として次々と殺害していった同事件は同国だけでなく、世界的にも非常に注目を集める事件となっていた。
連日メディアでも大々的に報じられた同事件は、どれほどの時間を費やしても世界各国が難民問題に一定の回答を導き出せないことに対する批判の材料にも用いられることとなった。
MDCCLXVI - File code:C18621 TYPE:Open - Secret
【ライアー】
●Open
性別が男であるということ以外、出身、年齢、氏名などの全てが不明の人物。
幼い頃に孤児院で生活していたとみられているが、思想の相違から孤児院での生活に耐え切れなくなったことにより脱走したといわれる。
その後は略奪や強盗殺人に手を染め、その日暮らしの生活をしていたという記録が各国警察の犯罪記録に残されている。
ある時は難民に紛れて中央ヨーロッパからドイツを目指したが、道中でハンガリー国境警備隊に捕縛され、難民収容施設に隔離された。
収容施設生活の中でも幾度か脱走を企て1度目は失敗に終わるものの、2度目は成功した。脱走成功後に凶悪犯罪を繰り返し起こした為に国際指名手配を受け、世界中の警察から追われる身となっていたがなかなか逮捕には至らず、ハンガリーに戻ったライアーは難民に対する無差別殺人事件を起こした。→【コードC18620:〈難民狩り事件〉を参照】
ライアー〈嘘つき〉という呼称は、難民収容施設に収容されていた際、看守に度々嘘を吐いたことに起因する。
●Secret〈特殊権限保持者のみ閲覧可能な情報〉
この男がどのようにして殺人を行っていたのかについては定かではなく、事件後の調査においても犯行手口の一切が〈不明〉と処理されている。
監視ドローンやその他の監視セキュリティシステムに一切姿を捉えられることなく、銃殺によって次々と難民を個別に殺害していったとみられるが、どのようにして姿を隠匿していたのかは最後まで明らかにならなかった。
姿を完璧に隠匿できる物品としてニッケル酸サマリウム(SmNiO3)を素材として応用し開発された〈擬装〉と仮称される軍事新兵器を用いた可能性が言及されているが、男がどのような経緯でそのような代物を手にしたのかは定かではない。
ある大国の国家軍事機密情報が国際連盟のデータベースを通じて漏洩した可能性も指摘されたが、後年の調査によって国連からの内部情報漏洩や各国家からの機密漏洩など、全ての疑いは完全に否定されている。
MDCCLXVI - File code:W-APRO TYPE:Open
【世界特殊事象研究機構】
世界中で多発する自然災害や天変地異への迅速な救援活動を可能とすべく、西暦2010年に設立された国際機関。
国際設立日:協定世界時 西暦2010年9月1日。
〈World Abnormal Phenomenon Research Organization〉の頭文字を取って〈W-APRO〉、或いは単に〈機構〉と呼称される。
機構は世界中で観測されているあらゆる異常気象や自然災害の観測及び被害に対する支援、またそれらの兆候の事前察知とその研究、その他航空・海洋事故などに関する調査、救助支援等を行う為に組織された。
当該国と機構との間に予め条約を締結することで、条約締結国で災害等が起きた際、機構側が必要だと判断すれば入国の承認を待つことなく領地・領海・領空への立ち入りが許可され、救助活動等を限定的ながら遂行できる特殊権限を持っている。
ただし領地内での行動にはもちろん制約があり、その範疇を越えた行動・活動は出来ない。活動条件に付いては加盟各国とそれぞれ事前協議の上、その条件など内容が細かく決定されている。
機構の運営に関しては世界各国が資金や物資、研究に必要なものを援助している。その代わりに機構が研究で得た成果やデータは国際連盟を通じて各国、又は他の国際機関へ共有されている。
突発的な災害など、有事の際には速やかに当該地域で展開している機構の本部が中心となって救援活動を行う。
国際連盟との繋がりは深いが、互いの運営や行動に対する〈不干渉の原則〉を持つ。
尚、特定の国に対して便宜を図る行為や、他国の利益を侵害する行為、地位や安全保障上の危険にさらしたりするようなデータの譲渡・共有等は条約で全面禁止されている。
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