第40話 エピローグ


 あれから半年、実のところ言えば、事態は思ったほど良くはなっていない。


 南の塔の封印もかけ直す事で確かに邪神は復活せず、盟約は果たされたのだが、人々の感情は治まらなかった。


 魔族の中に人間をヒト族として見ていない輩がいるように、人間にも魔族をモンスターと捉え、ヒト族として認めない輩がいるのだ。


 その為、魔族との盟約など無効と言う者、それ以外にも盟約は三大大国が勝手に結んだモノでうちの国は関係と言ったり、これは魔族の罠でわざと邪神復活を遅らせ自分達を油断させたところで何か恐ろしい計画を練っていると言いだす者までいるようだ。


 そのせいで、前ほど活発な侵攻戦は無いものの、国境付近では正義の名を借りた小規模武装組織によるテロ行為が起こり、貿易の目処も立っていない。


 結局のところ、前よりも平和になったというだけで、魔族と人間が本当の意味で共存する世界にはならなかったのだ。


 アルムや、レオンの恋人アリシアが望んだ世界には随分と遠い。


「しかし戦争がなくなっただけでも進歩したではないか」

「そうそう、オルオルえらいよー♪」

「って、なんでお前らは俺ん城(ち)にいるんだよ?」


 ある日の昼下がり、東の魔王城バルコニーでメイド長が入れた紅茶を飲みながら、四人はまったりモードである。


「何故と言われてもアルムもいるではないか?」

「え? オルファくんわたし邪魔だった?」

「いや、アルムはいつもの事だけど、お前らは国ほったらかしでいいのか? お前ら魔王だろ?」

「我は仕事の全てを愛人達に任せて来た」


「ボクはラムダに任せて来た。ていうかラムダが『王たるもの~~』とか言って超ウルサイんだよね~、外にも全然遊びに行けないし、こんな事なら魔王になんかならなきゃよかったよ」


「てめぇ俺らがどんだけ苦労したか分かって言ってるんだろうな?」


 こめかみに血管を浮かばせるオルファ。


 対してレアとメルは同時に席を立つ。


「「それにこの城って居心地いんだよ」」


 バルコニーから眼下の庭園で働くメイド達を見下ろし、二人は鼻息を荒くする。


「ここの城はメイドのレベルが高いな、何より制服が可愛い、メルの城のメイドは十割攻略したから今度はここのメイド達を攻略するとしよう」


「すっご、みんなムッチムチだ、うちのメイド、スレンダー率高くてさー」

「我の城はムッチムチどころかバインバインの爆乳娘揃いだぞ」

「マジで!? じゃあ次はレアんとこ行こうかな」


 魔王がこんな会話に興じるようならこの世界は平和なのだろう。


「今レアの奴サラッと凄い事言ったよな……」


 自分のメイド達をどう守ろうか考えながら、オルファとアルムは二人の背中に苦笑いを浮かべるが、すぐに向き合う。


「なぁアルム」

「なぁに、オルファくん」



「俺が、必ず魔族と人間が仲良くなれる世界作るからな」



 東の魔王の頼もしい笑みに、西の魔王は満開の笑みを咲かせる。


「うん、すっごく嬉しい、オルファくん大好き」



「そして我はお主ら二人が好きだ嫁になれ!」

「じゃあボクは三人のお嫁さーん♪」


 北の魔王と南の魔王が飛びかかって来て、西の魔王は東の魔王に助けを求めるようにとびついて、東の魔王は三人の魔王に押し潰される。


 それを見つけて東の四天王筆頭ルヴィーが顔をトロけさせる。


「やぁん、オルファちゃんたらハーレムルート突入? じゃあお姉ちゃんも混ざっちゃおうっと♪」

「これ以上混ざるなぁー!」


 こうして魔王達の奮闘は続く。

 人間達と共存できる日はいつになるか分からないが。

 西の魔王は大陸の為に、

 東の魔王は西の魔王の為に、

 北の魔王は東西の魔王の為に、

 南の魔王は東と西と北の魔王の為に、



 魔王だけの魔王パーティーの日々は続く。

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魔王パーティー選挙 鏡銀鉢 @kagamiginpachi

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