第27話 ざまぁさんが復讐に来た


 店の裏で窓から店内を監視し始めて五分、ティアとファムには霊体化してもらい、店内で義徒からは死角になっている場所を見てもらっている。


 既に野球部員は打ち上げを始めており、ロベルト先生も一緒に騒いでいるが今のところ、怪しい動きはない、ただ少し気になったのは霊力知覚で探ってもロベルト先生の霊力が並の人間と大差がない点だ。


 ティア達には気付かれないよう、極限まで霊力を抑えるよう言っておいたから当然といえば当然なのだが、ロベルト先生の目線や表情を見る限り、ティアとファムの存在にはまったく気付いていないようだ。


「はずれたかな……」

「まあ、確かに私達はロベルト先生に固執しすぎかもしれませんね、しかし野球部員は数えたところ一九人、これだけの若者が集まっていれば彼が犯人でなくても真犯人が来る可能性は高いでしょう」


 アリアの返答に頷いて義徒は嘆息を漏らした瞬間、義徒達はほぼ同時に同じ方向に視線を移した。


「来たな……」

「ええ」


 店内からティアとファムも戻り実体化して、路地裏のさらに奥へと視線を集中させると闇の中でゆっくりと蠢(うごめ)くヒトガタ達の姿を見定めた。


 パッと見は普通の人間だが、彼らも前に戦ったのと同じゾンビである。


 小さなうめき声は何十人分も重なり合い、地の底からすすり上がるように感じ、不気味でならなかった。


 ビルの屋上と違い、地上で戦えば間違いなく周囲に気付かれるだろう。


 そう判断して、義徒はすばやく全体不可視呪文を発動させた。


 《全体不可視呪文》魔道師が自分の武器を持ち歩く時に使う不可視呪文の進化型で周囲に特殊な結界を形成、ある一定以上の霊力を持つ者以外にはその空間の中で起こることは見えず、音も一切漏れることがない。


 これで義徒達はいくら暴れようとも店内の客に気付かれることはないが、無論、ロベルト先生が犯人ならば、彼には筒抜けだろう。


 義徒はすぐに腰のグリップを抜き構え、霊力を流し込むと刀身部分を具現化させて戦闘態勢に入り、敵を直視する。


 しかし、義徒の視覚はゾンビの群の奥に見慣れた顔を見つけた。


「……毒島(ぶすじま)?」


 ソレは下卑た笑みを浮かべると、ゾンビ達の前に進み出た。


「よう鷺澤、やっぱりお前か」


 現れたのは学校でいつも義徒に絡んできては返り討ちにあっている不良、毒島健(ぶすじまけん)であった。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る