第5話「お気に入りの店の店主が塩対応なんだが」
俺は10分ほど自転車を漕ぎ塩上亭に着いた。
「いらっしゃい、適当に空いてる席に座ってください」
店に入ると、この店の2代目店主の
俺は小さい時からこのお店にお世話になっているし、よくソルト兄さんには遊んで貰っていたので、尊敬の意も込めて兄さんと呼んでいる。
ソルト兄さんは2年前に初代店主の
料理も上手くて面倒見のいい性格だから、この店もより繁盛するんじゃないかと思っていたのだがソルト兄さんには1つ問題があった。
それは、極度の塩対応である。
ソルト兄さんは慣れていない人や知らない人に対しては物凄い塩対応になってしまう。
そのせいで、常連さんや事情を知っている人以外からは愛想の無い店主だと思われてしまうのだ。
あとは、仕事中には絶対につけないけど、耳と舌にピアスをしていて髪は金髪に染めているせいもあってヤンキーの店だと思われているのだろう。
だが、ソルト兄さんは料理の腕は初代の岩塩さんよりもあるし、客の健康状態などを判断して、その人に適切な塩分濃度で料理を出す事の出来る凄腕の料理人である。
だからこそ、俺は他の人達にもソルト兄さんは本当は優しいし料理も上手い良い人だということを知って欲しい。
「おい、ラテ」
「ん?どうしたのソルト兄さん?」
「ボーッとしてるけど何かあったのか?俺で良ければ話を聞くぞ」
「いや、ごめんなんでもないよ」
「そうか、ならいいんだけど。メニューはいつものでいいか?」
「うん、いつものやつでお願いするよ」
「分かった、そこにある雑誌でも適当に読んで待ってろ、すぐ作ってくるから」
「うん、ありがとう」
ソルト兄さんは基本的に自分に対する他人からの評価は気にしない人なので、ソルト兄さん自体が自分を変えようとは思っていない。
でも、本心では少しずつ変わらないといけないということは感じているらしい。
どうにかしてあげたいと考えていると、ソルト兄さんが料理を運んで来た。
「はい、お待たせ。特性塩ラーメントッピングもやし8倍、チャーシュー3倍、麺5倍の味濃いめ、油少なめ、麺硬めね」
「うん、ありがとうソルト兄さん」
「良いってことさ。さっさと食えよ麺が伸びちまうからな」
「はーい」
俺は元気よく答えると、特製塩ラーメンを3分で平らげるのだった。
「ご馳走様!」
「全く、相変わらずどんな速さで飯食うんだよお前は、それでちゃんと噛んで食ってるのが俺は怖いよ」
「えへへ、でも流石に全部10倍にしたら俺でも10分はかかるよ」
「それでも速すぎるんだよ」
「しょうがないじゃん!ソルト兄さんの作る料理が美味しすぎるんだから」
「ッ...全く、またいつでも食いに来いよ」
「勿論、何かある度に食べに行くよ」
俺とソルト兄さんがそんな話をしていると、お店の電話がなった。
「ちょっと悪い、出てくる」
「うん」
そう言って電話をしてきたソルト兄さんは、俺の方に戻ってくると俺に言った。
「ザラメが12時にゲーセンに来いってさ」
「え?ザラメさんが?」
どうやら電話の相手はザラメさんらしい。
ソルト兄さんとザラメさんは従兄妹で、
「多分、今日の大会は2人参加じゃないといけないからだろうな」
「あー、そういう事ね」
そういえば、今日は商店街のゲーセンでアーケード型格闘ゲームのコンビ大会があったのを完全に忘れていた。
俺とザラメさんは昔から良く一緒にゲームをしていて、商店街のゲーセンでは知らない人はほぼ居ない程の王者なのだ。
「どうする?12時まであと1時間ぐらいあるけど、花札でもするか?」
「いいの?仕事サボって」
「この時間帯はいつも暇だし、客も来ねぇから大丈夫だよ」
「まぁ、それならいいけど」
「じゃあ、持ってくるね」
「今日こそソルト兄さんに勝ってやる」
「うん、勝てたらいいね」
俺はソルト兄さんとの花札で勝ったことがない。というか、カードゲーム等の引き運が必要なゲームではソルト兄さんの横に並ぶ者はいないだろう。必要なタイミングで必ずそのカードを引いてくる強運の持ち主で、勝てる人間を見た事がないのだ。
「じゃあ、久々に本気で相手するよ」
「絶対に勝つ!」
こうして俺はソルト兄さんと12時になるまで花札をして、見事なまでに惨敗するのだった
俺の周りの人間(特に弟)がとある成分を取ると性別転換(セックスコンバーション)するんだが 白悟那美 破捨多 @tukimiko
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