閑話
「ご苦労様でした。村長」
「いえ、我らが神のお導きに従ったまでです」
女神、アストラ。
この世界で私はそう呼ばれている。
「いえ、無事あの勇者を送り出す。この最初の難関を突破できたのは立派です。かれこれ何度ここで躓いたことか」
そう、この世界を救う勇者。
『朝比奈 透』
彼は、本当にクソ野郎だ。
女神がこんな言い方をしては良くないが。
何回転生させても、一向に魔王を倒す気配がない。
今回で15回目だ。
記憶を消して転生させてやっと旅立ちに成功した。
とりあえず、最初の村でゴロゴロしながら一生を過ごすルートからは回避できた。
「とりあえず貴方たちの目標は終わりです。あとは静かに暮らしてください」
「かしこまりました」
「では失礼します」
そう言って神は天へと帰っていった。
しっかり村の者全員の記憶を消して。
天界へと帰って早々、部下に愚痴を聞いてもらう事にした。
「この世界を救う方法がハードモードすぎる件について」
「知らないです。仕事してください女神様」
「ちょっとぐらい愚痴を聞いてくれても良いじゃない!」
そう、この世界を救う方法。
「なんでこの世界の勇者適正を持つ人があんなクソ野郎しかいないの?」
「あんなクソ野郎だからじゃないでしょうか」
「腹立つわね」
そう、彼しかこの世界に転生できる人物がいないのである。
他の世界は勇者が世界を救えなくても、別の勇者を送り込む事ができるのだが、この世界は何故か彼しか送ることができない。
「しかも、何故かあの村にしか転生しないのよね」
何が関係あるのかわからないが、あの村以外で転生ができない身体らしい。
あんなクソ山奥の変な宗教の村に転生させるせいでこの後の展開でもかなりの支障が出る。
ただ、今回は一緒について行くあの女の記憶を全部消しておいた。
今まで試したことのないパターンをやっておかないと、何が成功につながるか分からないからだ。
「前回はあの女がクソ野郎を殺したせいで魔王が討伐できなかったし。前々回はあのクソ野郎を引きこもりにしやがった。」
「女神様、口調が乱れています」
「うるさいわよ!」
あの女、必ずクソ野郎に引っ付いてくるので恐らく攻略上必須キャラなのだろう。
記憶を消したが結局ついてきている辺り、何をしてもダメそうだ。
「アイツのことが好きだからついて来てんのかと記憶を消してみたが、結局アイツがあの女に好きとか言いやがった。何があってもついてきそうだな」
とにかく、この世界を救わなければ次の世界に移れない。女神として生き残って行くために、こんな世界で足止めをされていてはいけないのだ。
「この世界の転生チャンスがあと5回、その間に何とかしてあのクソ野郎で攻略しないと」
そんな、神視点の事情を知らない二人は
魔王討伐の旅路を順調に進めているのであった。
悔い改めてください! ねっつ @Center
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