花桃

「飯野副会長、そこに座らないで」

 放課後の生徒会室。

 会長である私の言葉に従わない生意気な後輩の飯野香奈枝を注意すると、サッと机から降りた。

「今日は聞き分けがいいのね、珍し」

 全てを言い終える前に、目の前にある机に彼女が座る。

「ちょっ……どきなさい副会長」

 注意するために彼女の方へと顔を向けた私に対して、彼女は冷ややかな視線を落としていた。

「聞き分けいいのは……私じゃなくて早紀の方でしょ」

 彼女が両足で私を引き寄せた。

 私の頭が彼女のお腹にすっぽりとハマり、そのまま抱かれた。

「生意気言う早紀もかわいいよね……けど、わきまえないとね」

 主従の鎖が、言葉になって表れているのがわかる。

 ぞくぞくとした感覚が這い上がってきて、脳を甘く痺れさせた。


「さあ、いつものようにキスをして」


 彼女の命令が、甘く痺れた脳をさらに痺れさせる。

 蜂蜜を脳に直接かけられたような甘さの中で、私は自分の理性を蜜のプールに沈めて、命令を遂行する。

 私の女王の太ももの内側にキスをする。

 表情を少し緩ませた香奈枝様に自分の潤んだ瞳を見せると、優しく抱きしめてくれた。

 蜜の中に沈んでいく自分の感覚に溺れながら、女王の腕の中で私は微笑んだ。


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