パパパパ……

「生きるよりも辛いことなんて、あるのかしら?」

奈緒がベランダから秋の空を見上げながらそう言い、私はその頭にチョップを喰らわせた。

「痛い!暴力!パワハラにDV!」

とにかく知っている単語を並べたてるその口を手でふさぐ。

「まーた仕事で何か言われたんでしょ?」

「むぃ」

口をふさぐ手を取り払いもせずに、奈緒が返事をする。

「聞くから言いなさいな、アンタは私の……」

口に出すのが、恥ずかしい。

「パパパパ……パートナーなんだからさ」

噛みまくってちゃんと言えてないことを、奈緒が目だけで笑って、ギュッと抱きついて来た。

顔が、熱い。

なんで熱いのかなんて、考えないようにして、私は奈緒の頭を撫でた。


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