冬は嫌い、だって……

「冬は嫌い、だって寒いから」

と、シンプルな言葉で自分の冬嫌いをまとめた千佳は出していた頭を毛布の中へと引っ込めた。

「こーら、千佳。そんなこと言ってたら起きられないよ」

 まるでお母さんみたい、なんて思いながら毛布の中に逃げ込んだ彼女に片足を乗せて踏みつける。

 先程まで自分も毛布の中にいたというのに、素足でフローリングを歩いたせいで足の裏がすっかりと冷たくなっていた。

 足の裏から伝わる温かさが、心地いい。

「いいです、私は虫なんです、このまま春まで冬眠しますさようなら……」

 言いたいことを全て言った後、わざとらしくイビキをかいてみせた愛おしくもバカな存在である彼女に少々のイラだちを覚えた私は、毛布の中に入り込んだ。

「おやおや、美恵も一緒に冬眠ですか?いいですよいいですよ、春まで寝ましょう寝ましょう」

「そうね」

「ですよですよ」

「ああ、本当にここは温かいのね。まるで天国……」

「でしょうでしょう?美恵まで来てくれて本当に天国ですよ」

「なら、地獄を見せてあげるわ」

「へ?」

 彼女が驚いた声を出した直後、中から布団を蹴って剥がし、彼女を正面から抱きしめ、背中から冷たくなった手を入れ、パジャマのズボンの裾をずらして彼女の脛に足の裏を添わせた。

「ぎゃあああああああ!寒い!冷たい!鬼!悪魔!」

「あー、あったかい」

「鬼!鬼です!ここは地獄です!ああああああああああああああ!」


 寝室に響く彼女の絶叫を聞きながら、私は彼女の温もりを楽しんだ。


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