空想しっぽ
「もうっ、ナナちゃんなんて嫌い!」
サヤも私にそう言った後、膝から崩れ落ちて、四つん這いになった。
私の言った「嘘が下手だね」という言葉に対抗したサヤは、立ち上がっていきなり、そう言ったのだった。
「あーあ、嫌われちゃった」
茶化すように言うと、頭を横にもげんばかりに強く振る。
「ないないない!私がナナちゃん嫌いになるなんてない!嘘だってば」
「あーあ、サヤに嘘つかれた。ショックだなあ」
「だって、ナナちゃんが嘘つくの下手って言うから……」
もう、どうしていいのかわからない。彼女の顔はそう言っているかのようだった。
「はいはい、わかってるよ」
頭を撫でてやると、顔がぱぁっと明るくなり、この世の全ての中でご主人様が大好き、といった犬のように、私の胸に頭をつっこんで、ふがふがと鼻を鳴らしながら懐く。
「ナナちゃん好き好き」
私にいじめられて、幸せそうにそう呟くサヤがかわいく思える。
「はいはい」
冷静を装いながら、口元が緩まないように、彼女のお尻の辺りに視線を移す。
そこには、彼女の機嫌を表すかのように大きく振れる尻尾が、私にだけ見えた。
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