振袖

 振袖を着てはしゃぐ美晴の首根っこを捕まえる。

「そんな風に暴れてると、振袖が着られなくなる日が来ないよ?」

 私がそう言うと、美晴がニンマリと笑う。

「そんな日が来ると思うの?」

「当たり前よ、そうじゃなきゃ困るでしょ?」

「全然!」

「バカねえ」

「そうだねえ」

 美晴が私を抱きしめて耳に口を近づけた。

「困るわけないじゃん。私が好きなのはみぃちゃんしかいないんだから」

 猫の愛情表現のように耳を一舐めすると、美晴はすぐに離れた。

 血液が集まり始めている両耳を手で隠しながら、私は今年のおみくじは引かないでおこうと決めた。

 誰がなんと言おうと大吉だろう。

 こんなに嬉しい事が年始からあるのだから。


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