第38話 これからも「愛車と仲間と共に、異世界で」

「ハヤテ~、ミネルバさんから今日中に届けて欲しいって連絡があったっちぃ~」


「ハヤテ。今回はまたオークの山賊のいる地域を通るんだろ?私も一緒に行った方が良くないか?」


「ハヤテさん。でしたら私はアーレンの街で必要資材を調達するついでに、イザという時のために待機していましょうか?」


 朝からレミ、ミッシェル、リシアの三人が、忙しく働く声が聞こえる。

 そういう俺は愛車CBR1000RR-R ファイヤーブレードの整備をしていた。

 レミの「完全復活魔法」のおかげもあって、コイツはいつも快調だ。

 俺はバイクから目を離すと答えた。


「いや、今回は大丈夫だよ。オークの地域は行かないからさ。それより俺の回るルートで、顧客からの配送依頼がないか確認しておいてくれよ。出来れば一回で済ませたい」


「わかった。私は首都アルケポリスの客に聞いてみるよ」


「私はアーレンのお客様に確認してみますね」


「頼む~。依頼があったらレミに伝えておいて。レミ、取りまとめを頼んだぞ」


「解ってるっち~」


 俺はキャリアケースの取り付けを確認すると、CBRに跨った。

 まずはハルステッド商会に行って、ミネルバさんの証書を受け取らねば。


 俺の仕事はまずまず順調にいっていた。

 『ハヤテ特別輸送会社』はこのプライス王国では「重要書類の特急配送」という点で非常に重宝されているのだ。

 また俺は高額な品物の証書を扱う事が多かった。

 その内、一々証書や金貨を運ぶのが面倒になったため、いったんは俺の所で金を預かり、その証書を発行して連絡一本で支払を代行する「決済」の仕事も行うようになっていた。

 つまり金融業も一部行っているという事だ。

 俺は商学部だが、勉強は苦手な上、ほとんど授業にも出ていない。

 試験はFランだから持ち込み可な上、問題も簡単だったしな。

 でもこんな事なら、もっとしっかり勉強しておくべきだったと後悔している。

 今更ながら学問の重要性を認識し、ハルステッド商会のミネルバさんに時々教えてもらっている状況だ。


 毎日の生活は楽しくやっている。

 アパートメントの一室に俺とレミ、ミッシェル、リシアの四人で暮らしているのだ。

 リシアもあの時間の後、正式に俺達『ハヤテ特別輸送会社』の一員となった。

 俺は美女と美少女と可愛い魔女っ子の三人に囲まれて暮らしている訳だ。

 現世では考えられないハッピーな状況なはずなのだが、今の所その恩恵は全く受けられていない。

 三人の女子たちは、互いに監視し合っているのだ。

 そして堅物のミッシェル、根が真面目なリシアは、そういう雰囲気には中々持ち込ませてくれない。

 ロリ魔女っ子のレミは、まだそうなるのは早すぎだ。


 だがこんな生活もいいかもしれない。

 それに俺にはバイクがあれば満足だ。

 さて、そろそろ出発する時間だ。

 レミを先頭にミッシェル、リシアが降りてくる。

 なぜか俺が長距離輸送に行く時は、三人が見送りをしてくれるのが慣例になってしまった。


「それじゃあ、行ってくるな」


「行ってらっしゃい」と清楚な笑顔で送り出してくれるリシア。


「気を付けてな。夜には報告の連絡を入れろよ」とお姉さん顔で忠告するミッシェル。


「おみやげ、楽しみにしてるっち!」とまだ子供っぽい要求を忘れないレミ。


 俺は肩手を挙げてCBRを発進させた。

 みんなが手を振って見送ってくれる。


 そうだ、今度は休暇を取って、みんなで海沿いのリゾート地、サン・ビフィエルに行こう!

 そのためにも稼がないとな。


 そして……俺はこの世界でも街道最速の男だ!

(完)



ここまで読んで頂いてありがとうございます。

他の作品も読んで頂ければ幸いです。

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異世界でバイク便~俺は異世界でも公道最速を目指す! 震電みひろ @shinden_novel

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