魔法が解けたシンデレラ、夜道をパジャマで

稲見 琥珀

数十分間の冒険

ずっと前から、私にかかった魔法は解けていた


嫌だった


やらなきゃいけないことができない自分が


嫌だった


出来ない事もしなきゃいけない世の中が


嫌だった


今後の事を考えるのが


嫌だった


我儘で愚図でぶきっちょな自分が、大っ嫌いだった


ネットを見れば溢れる、私より幸せそうな輩が

どうにもこうにも妬ましくて、そんな自分が嫌いで


家族の期待に応えられない、そもそも期待なんてされてない

何度も言う、私は私が嫌いだ


それで泣いて家を飛び出した、午後8時過ぎに、

パジャマのまま、マスクせずに、泣きながら


出来るだけ目立たないように、大通りは避けた


暗い道は怖かった

ちょっとの音にも過剰に反応した


途中、何度も人とすれ違った

私はパジャマ、マスク無し、泣いてる、子供、怪しさ満点だ


でも、反応した人はいなかった


何度も何度も、頭の中の誰かに励まされた


それで、家に帰る決心がついた


しかし、気づいた時にはもう遅かった

その場所がどこか分からなかった


とりあえず、今着た方向の道へ向かった


夜道は暗かった

街灯は一つもなかった


音も響いた


怪談好きが祟って、

居もしない化け物におびえた


がむしゃらに歩いていた、必死だった、

全く疲れなかった、寒くなかった


いつの間にか、知ってる道に居た


歩いて、歩いて、家に帰った


いつの間にか、泣き止んでた


私が経験した、たった数十分間の冒険


魔法が解けた少女の冒険

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魔法が解けたシンデレラ、夜道をパジャマで 稲見 琥珀 @ineri-hu

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