第2話 公衆電話
僕は怖い話が好きだ。それこそ昔の呪術やら妖怪やらから今のネット小説を読み漁るくらいには。怖い話にはやはり怪異が登場する。恐ろしい怪異を前に僕もかっこよく...なんて妄想はしても結局逃げるのがオチだ。
そんな僕も...つい半年ほど前、久々に怪異と会った。
《ジリリリ!ジリリリ!》...どこかで電話が鳴っていた、慌てて携帯を見る。画面にはゲームの実況動画だけが映っている...当たり前だ。
僕はさっき、上り坂を自転車に乗るのがめんどくさくて、歩きスマホをしていたのだ。
周りは寂れた商店街...さっき日が沈んだ時間で、さらにもうそろそろ夕ご飯の時間だ。
誰かいるはずもない。しかしずっと聞こえる電話の音、僕はジリリリという耳障りな音におばあちゃんの家にある黒電話を想像した。
「...黒電話使ってるとこまだあるのか...それにしても、誰か電話をとる人いないのか?」
つい口に出してしまった...誰もいないよな?と要らぬ心配をする。
しかし不思議だ...いくら寂れていても人がいないとこに電話がかかるのだろうか...そんな考えが浮かび、気づいた。建物に反射して聞こえていたのか...納得したと妙に冷静になりながら目の前の公衆電話が鳴っているのを妙に冷静になりながら見つめる。
なるほど、建物内じゃなくて公衆電話が鳴ってたのか。それは誰も取らないな。
この状況...怖い話好きとしては向こうを覗くまたとないチャンス...しかし...僕はつい最近(と言っても半年くらい前だが)ある村の映画を思い出していた。
この状況は電話ボックスに入るのは簡単だ...問題は中に入ったら出られるかどうかだ。
余談だが映画やドラマで電話ボックスの扉を外から押すだけでなかなか出られないのを見た事があるだろうか、あれは本当にあることなのだ。小学生の頃、よくいじめっ子たちに閉じ込められて無理やり開けようとしてもなかなか開かずに泣いたことがある。自分と同じ、もしくは少し弱いレベルの力で簡単に閉じ込められるのだ、体当たりしようにも狭いせいで体重をかけることしか出来ない、もしイタズラ電話や間違い電話でなく本当の幽霊なら力加減も何をしてくるかも分からない、そんな危険な得のない状況に自ら陥るバカなんて.....残念なお知らせだ、僕はバカらしい。好奇心に負けてしまった。後先をいちいち考えるより行動する方が好きなのだ。
入ってしまった...電話をとればもう戻れない...かもしれない...。
電話に手を伸ばし...カチャン.......?
何も...聞こえない?ノイズや風、テレビ、吐息、どの音も聞こえない。それもおかしい。
電話は誰にも繋がっていないならそれがわかる音が聞こえるはずだ。つまり...誰か...息すら聞こえないところから...ナニカがいる...。
勇気をだして「間違い電話ですか?」と聞いた...静寂...?
そしておかしい事に気がついた。音が聞こえない...もちろん電話の音じゃない...車の音だ。
いくら田舎とはいえ商店街があり...商店街の近くに大きな道路があるのだ、外は薄暗い...しかしまだ『薄暗い』のだ。車が通らなくなるには早すぎる。慌てて電話ボックスから出た。扉が開かないなる心配は杞憂で終わったようだ...すぐに音が聞こえる。車の音だ。周りに人はいない...何かあった訳では無いがほっとしてしまう。
ジリリリ...ジリリリ...
?!...また鳴り出した、怖くなり自転車を漕ぎ出した。すると嘘のように鳴り止んだ。
あれはなんだったのだろうか...
その夜、友達にその話をした。返ってきた返答は「誰かがサトルくんでもやってたんじゃない?」だそうだ。
サトルくん...妖怪にサトリって妖怪がいたなぁ...今回の事には関係無さそうだなぁ...
そんな事を思いつつ眠りにつく...部屋についてきた「何か」に気が付きながら...
「」 磯部 塩 @isoben
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。「」の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます