六
「宣宅どのは、内側からあやかしに食われてしまったのです」
ことが終わったあと、別室に引き上げてきた鬼一郎は、用人の倉田にそんなふうに説明した。乳母のたえは竹丸につきっきりで、この場には来なかった。
鬼一郎は続ける。
「そうして、宣宅どのを乗っ取ったあやかしは、瘴気を吐きだし、竹丸君を弱らせていったのです」
倉田は、ふむ、とうなずき、「もうひとつ」と身を乗りだした。
鬼一郎は問う。
「刀につらぬかれて、なんともなかったことでしょうか?」
倉田がうなずくと、鬼一郎はいたずらっ子のようにほほえんだ。
「〈かまいたち〉は、あやかしを斬る妖刀です。この刀、人だけを斬れば、あるいは、あやかしだけを斬れば、普通に斬れます。ところが、人とあやかしの両方を同時に串刺しにしたときは、不思議なことに、あやかしの血だけを吸うのです。人は傷つけない。もっとも、串刺しにされた人の痛みたるや、大変なものなのですが」
先ほど、それを実演して見せた鬼一郎は、もう一度小さく笑うと、出された報酬の金子を、ふところにしまったのだった。
〈了〉
かまいたち ~あやかし斬り~ 岫まりも @Kuki_Marimo
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