意味不明殺し

エリー.ファー

意味不明殺し

 宇宙人がやってきて、世界を壊してくれたらいいのに。

 宇宙人に近い何かがやってきて、世界を壊してくれたらいいのに。

 宇宙人が襲来して、世界を壊してくれたらいいにに。

 宇宙人が突撃してきて、世界を壊してくれたらいいのに。

 宇宙人がぶっ飛んできて、世界を壊してくれたらいいのに。

 

 屋上から見える空は美しかった。

 余りにも美しいので飛び降りたくなる。

 やめておけばよかったのだ。

 告白をした。

 僕は愛を伝えたのだ。

 恋心を相手に押し付けたと言ってもいい。

 男の僕が、同じ男へと。

 すぐに学校はパニックになった。

 居場所がなくなって、屋上である。

 何もしなければ良かったのか。そうすれば、何事も起きなかったのか。

 まぁ。

 起きなかったのだろう。

 僕が起こした波は、大きくそして強かった。ありとあらゆるものを流してしまった。

 それがどこかにあった壁にぶつかり、また逆方向の津波となって僕に向かってきているという状況。

 いや、それは違うだろう。と思う。

 津波は作ってしまったが、だからといってそれ以上の津波を僕に当てるのは道理としてどうなのだろう。

 一応、学校では道徳を教えてもらうのだから、今回くらいは活用してくれてもいいのではないかと思う。

 あぁ、両親に頼んで転校させてもらうべきだろうか。父も母も、僕の秘密については一切知らないけれど。きっとショックを受けて、母は卒倒するだろう。父はたぶん、そんなに気にしないはずだ。僕に興味がないということではない、僕と自分が別個の存在であるということを理解できているためだ。

 父は、高卒で市役所の職員である。

 頭はわりと良い。

 進学校にいる僕に、勉強を教えられる。

 しかも、分かりやすい。

 大卒ではないことは最近知って驚いたが、賢い人には余り関係のないことだったのだろう。

 でも、大学は出ていた方が良いと言われた。

「よう、お前、告白したんだってな。超バカだな」

 分類は幼馴染。性別は女。髪の色は金。口の悪さは極悪。

 そんな女子高生が現れた。

 苗字が長くて面倒なので、幼馴染という言葉で表現することにする。

「あぁ、告白をしてしまったね」

「バカじゃね」

「バカじゃないと言いたいけど。バカだね」

「あはは。バカだなあ。皆、めっちゃ騒いでんぞ」

「そりゃそうだろうね。僕は面白いだろう」

「お前っていうか、お前の周りの右往左往してるやつらが面白いけどな」

「いいよ、なんだって」

「なんだっていいなら、教室に戻れよ」

「戻ってみろ。今まで騒いでいた教室が急に静まり返るんだぞ。すっごく嫌だ」

「じゃあ、帰れば。荷物とか持ってきてやるよ」

 幼馴染が乱暴に僕の背中を叩いてくる。

「いいよ。それくらい自分で取りに行くから」

「できんのかよ」

「我慢する」

「我慢は体によくないぜ」

「体によくないんじゃなくて、苦いんだ。薬と一緒さ」

「だったらうだうだ言ってねぇで早く行けよ。あたしはもう自分の荷物持ってきてるぜ」

 幼馴染は持っていたらバッグから煙草を取り出すと火をつけた。

 臭い煙が漂う。

 嫌いだ。

「直ぐに荷物を取ってくるから、校門のところで待っててくれ」

「あいよ」

 僕は屋上から出ていこうと扉に向かう。

「あのさあ」

「なんだい」

「あたしと付き合うってのは駄目なのかよ」

 僕は扉に手をかける

「前にも言ったけど」

「分かってる」

 扉を開く。

 扉の下の方から濡れた砂をすりつぶすような音が聞こえる。

「僕を」

「なんだよ」

「もっと、追いかけてきてくれ」

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