第5話 これからも

 息を吹きかけられるたびに大きくだんだんと、大きく反応してしまう――そんなことを繰り返していると、不意に鈴音が私の顔を覗き込んできた。


「つばめ、キスしよ?」

「はっ、キ、キス……」


 キスは別に、えっちなことではないはずだ。

 思考は定かではないが、私は鈴音の言葉に頷くと、彼女はそっと私と口づけを交わす。


「んぅ……」


 上から覆いかぶさるように。けれど、決して苦しくはならないように。

 彼女の小さな舌が私の口の中に入り込んでくる。

 これはいわゆる、ディープキスというものではないだろうか――ただ唇を合わせるだけでなく、舌を絡ませるような行為。

 キスをしているだけのはずなのに、だんだんと下腹部の方に意識が向いてしまう。

 このままだとまずい、と抵抗しようとするが、やはり鈴音の方が力が強く、抵抗虚しく――私はただ彼女に好き放題やられ続けるだけだ。

 どれくらい時間が経っただろうか、ようやく解放してくれて、私は鈴音と間近で向き合う。

 お互いの唾液が混ざり合ったものが、鈴音の口元から糸を引いて、私の口元と繋がっている。

 彼女の頬は紅潮していて、明らかに興奮していた。

 こんな表情を間近で見せられて、果たして我慢できる者などいるのだろうか。


「つばめ、続けていい?」

「……う、ん」


 私は彼女の問いに、小さく頷いてしまった。

 何をするか言わなかったが、彼女が何をしたいのか分かっている――さらに、『えっちなこと』をしようとしている、ということが。

 私の決意はどこへ行ってしまったのか、鈴音のしたいことを受け入れようとしている。

 彼女がしたいと言うのだから、望んでいるのだからそれでいいじゃないか、と弱すぎる考えに負けて、私はたった今――流れに身を任せようとしていた。そのとき――ピピピピピッ!

 大きなタイマーの音で、私は驚いてその方向を見る。

 そこには、先ほど鈴音が投げやりに放ったスマホがあって、音の原因がそれであることもすぐに分かった。

 鈴音はやや不服そうな表情をしながらも、ゆっくりと身体を起こすと、スマホを手に取る。


「今日は、これでおしまいね」

「……え?」

「わたしとえっちしたくなった?」


 ――正直したくない、と言えば嘘になるが、私は首を縦には振らず、


「そ、そんなこと、ない」

「そっか。じゃあ、続きはまた明日だね」

「明日も、するの……!?」

「うん、ずっとするよ。つばめがしたくなるまで、ずーっと、ね?」


 私の手を縛るヒモをほどきながら、囁くように鈴音は言う。

 その言葉だけで、私は背筋にゾクゾクとした感覚を覚え、言い知らぬ不安感と緊張感と共に――期待感が膨らんでしまっていた。

 明日は一体、何をしてくれるのだろう、と。

 すでに私は、彼女とのゲームに負けていると言っても、過言ではないのかもしれない。それでも、私は上っ面だけの理性で、答える。


「絶対、負けないから……!」


 ――敗北必至の戦いは、明日からも続いていくのだ。

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幼馴染が彼女になったので、真面目なお付き合いをしていきたいと心に誓ったのに、めちゃくちゃ誘惑してくる件 笹塔五郎 @sasacibe

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