第4話:私の王子様
それからしばらくして、帆波から内緒の話があると家に呼び出された。なんだろうと思って彼女の家に行くと、彼女は自分がレズビアンであることを打ち明けてくれた。彼女もまた、海にそのことを相談していたらしい。
「私も海に同じ相談したの」
「そうなんだ。じゃあもしかして月子も……」
「うん。女の子が好き」
「仲間だ」と、彼女は嬉しそうに笑う。その笑顔が私の心臓を高鳴らす。
「好きな人いるの?」
「うん。居るよ」
「……そうなんだ」
自分で聞いておきながら、ショックだった。
「その子、見た目は背が高くてカッコよくて、王子って呼ばれてるんだけど、本当は凄く可愛い人で——」
王子と呼ばれていて、だけど本当は可愛い人。海のことだと思ったが、彼女はくすくすと笑いながら「海じゃないよ」と言う。
「えっ。じゃあ誰? 私の知らない人?」
「もー! なんで分からないかなぁ! 私が好きなのは、海じゃない方の王子様! 白王子の方!」
「へ? 白王子って……えっ、わた、私?」
「そう。私、月子が好き。可愛い月子が好き」
「わ、私は可愛くな——」
口から出かけた否定の言葉は、彼女の唇に奪われる。一瞬何が起きたかわからなかったが、悪戯っぽく笑う彼女の顔が視界に入った瞬間、自分でも顔が真っ赤になっているのがわかるくらい顔が熱くなった。
「月子は可愛いよ。可愛い。分かるまで一生言い続けるから」
「そんなこと——「そんなことなくない。月子は可愛い。誰がなんと言おうと、私はそう思ってる」
真っ直ぐな瞳が、私の心を焦がす。そんなことない。私は可愛くなんてない。そう言いかけるたびに、彼女は私の言葉を奪って囁いた。「可愛い」「好きだよ」と。
「も、もう……分かったから……」
「分かったならよろしい」
満足そうな顔をして、彼女は私から離れた。離れてもまだ心臓は鳴り止まない。
「……私も帆波が好き」
私がそう呟くと、彼女は「気づいてた」と笑った。
「い、いつから気づいてたの?」
「海から聞いた」
「へっ」
「相談したら、月子からも同じ相談受けたから告っておいでって」
「ず、ずるい!」
「あははっ。けど、こんな鈍いと思わなかった。あんなにアピールしてるのに。女が好きって聞いたらもう察するでしょ」
「……私以外にも可愛いって言うじゃん」
「言ったっけ?」
「……言ってたよ。なんか、アニメの……女の子に」
「……えっ。そこに嫉妬するの? なにそれ。可愛い」
「……」
「可愛いよ。私の月子」
「わ、私のって……!」
「私のになって。月子。私、月子が欲しい」
「ほ、欲しいって言い方……なんか……やだ……私、物じゃないし……」
「ふふ。ごめん。じゃあ、言い方変える。
私の恋人になって。月子」
「……うん」
この時彼女の告白を受け入れたことを、私は後悔したことは一度もない。誰がなんと言おうと、私は心の底からそう思っている。
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