堕ちた聖女の仲間たち
「
真面目でしっかり者のヘパティーツァ、小柄で頑張り屋のマイプティア、華のように美しいエルシス、優しく面倒見の良かったキルシャズィア、気が利いて冗談好きだったピオニーア、博識で聡明なクメリーテ。彼女たちと過ごした日々はまるで昨日の事のように思い出せます」
フェルは
「
それはあまりに身近にあふれていて、ひとたび意識をとらえられたが最後、そのまま連れて行かれてしまう気がしたからです。
それでも、ごく稀に死の話をしました。
雪解けのぬかるみの、ぬちゃぬちゃした泥溜まりを通りながら、こんなところでは死ねないね、と囁き合ったものです。泥と野生動物の糞に塗れ、戦車や装甲車にふみしだかれ、ぐちゃりと押しつぶされて、ただの汚泥となり果てるのだけは嫌と。
実際にそうした死体……いえ、死体だったモノはそこら中に転がっていました」
淡々とした口調で語られる、あまりにおぞましい死体の有様に、広場に集まった群衆はしんと静まり返っていた。
彼女の言葉を妨げる、かすかな物音すら立てることが
「ヘパティーツァとキルシャズィアは夕飯の時にいつもみんなが配給のスープの具をもらえるかどうか気を配ってくれました。
衛生兵は負傷した兵士を担いで安全地帯に運びます。
まだ成長途上の小柄な
しかし、戦わない女の子たちに栄養は不要だと言われて、衛生兵には具を入れないようにする兵士が大勢いました。
ヘパティーツァとキルシャズィアはそんな意地悪な兵士たちに抗議して、自分が負傷した時に救助して欲しければ、
戦場に送られた兵士が何を食べどんな暮らしをしていたか、僕たちは全く興味がなかった。大切なのは、自分たちに危険が及ぶか及ばないか、利権を奪われずに済むかどうか。自分が昨日と同じ明日を迎えられるかどうか。ただそれだけだ。
兵士たちは戦闘に勝利することが全てで、彼らにも生活があるなんて思ってもみなかった。
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