堕ちた聖女の罪
「早く!早く奴を黙らせろっ!!」
「なぜあの女が喋れるのっ!?喉を潰して声を出せなくしたはずなのにっ」
「何でもいい、一秒でも早く黙らせろ!今すぐ取り押さえるのだ!」
パニック気味の僕とルーの命令は、しかし聞き届けられる事がなかった。
「駄目ですっ!結界があって近寄れません!」
「では静寂魔法で声を封じろ!」
「それも無理です!情報伝達魔法で直接言葉を群衆の心に届けているようです!」
彼女が淡々と語り続ける戦場の現実は、王家がひた隠しにしてきた国家の罪だ。
「
しかし、それはおぞましくも罪深い悪魔の所業でした。何故ならその治療は、放っておけば死の平穏という救いが訪れたはずの兵士たちを無理やり立ち上がらせ、このおぞましい現世に生命を縛り付け、地獄の戦場に繰り返し送り返す行為そのものだったからです。
彼らはもともと勇猛果敢な戦士たちでしたが、
あれほど激しかったヤジも今はぴたりとやんでいて、今はフェルの凛とした、しかし抑揚に乏しい声だけが広場を満たしている。
「
癒しの聖女だなんて、とんでもない。
静まり返った民衆は、既に彼女の言葉が持つ異様な迫力に完全に飲まれている。彼女は己の名誉を否定し、罪を認めてはいるが、それは僕が望んだものではない。
「
ただ、一つだけ心残りがあります。お集りの皆さま、
いったい何を言い出すつもりなのか。僕たちはなすすべもなく彼女の言葉が終わるのを待つよりほかはなかった。
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