堕ちた聖女の告白
処刑当日。僕は広場に集まった群衆の前でフェルの罪状を高々と読み上げた。
「被告人フェルチア・ポピエルは王太子の婚約者として王族の務めを果たすべく最前線に赴任するも、一切の責務を放棄し
また、三百二十六名もの兵士を救助したと功績を捏造し、不正に
更にありもしない戦場の
よって被告人を
僕の堂々たる宣言に応えて広場に集まった民衆が歓喜の声を上げる。
「くたばれ淫売」といった聞くに堪えない野次と
僕のことなど眼中に入れようともしない、いけ好かない女を今日こそ葬り去れる。これでどちらが上か、奴もさすがに理解するだろう。地獄で心の底から後悔するが良い。
「さあ、最後の慈悲である。申し開きがあるならば言うが良い!」
びしっと指をつきつけて言い放つが、声など出るはずがない。余計な事を言えぬよう、獄中で食事に水銀を混ぜ
しかし、勝ち誇る僕の思惑と裏腹に、凛とした涼やかな声が処刑場に響き渡る。
「お集りの皆さん、
な、なぜ奴は当然のように、広場全体に響き渡るように語りかける事ができるのだ!?奴の喉は確かに潰したはず。
最期の申し開きなど上辺だけの建前で、一言だって喋らせる気はなかったのに。
「
そこで、彼らは当時王太子殿下の婚約者だった
フェルは僕たちの焦りなど素知らぬ顔で、淡々と語り続けている。
静寂魔法をかける等の対応策は全く通用せず、それ以前に、奴の喉は完全に潰れて声が出せないはずなのに、なぜあのような弁舌が可能なのだろう?
まさか、奴は無詠唱で高度な治癒魔法や結界術を起動、展開する事ができる天才なのだろうか。
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