♡時折吹く風♡

x頭金x

第1話

 上野にある芸術劇場での公演を終えて西に向かう。太陽が沈んでいる方向だ。世界はオレンジから紫へと変わろうとしている。


 日中の蒸し暑さが少しだけ緩和され風が木々を通り養分を溜め込んで私の体を通り過ぎて行く。めくったシャツの袖を伸ばしてしばらく歩く。やっぱり暑い。めくる。


 「素晴らしい演奏でした。」


 すれ違う人々も同じ風を感じている。様々な人々の間を颯爽と通り抜けて行く風はどこまで吹くのだろうか。風は風、勝手気ままに吹きすさぶ。


 連綿と続く命の連鎖のように、我々は全てのものが繋がって出来ている。私という人間、そして私が存在している世界は、一見断続的に見えるかもしれないが、素粒子レベルでは地続きで全てが繋がっている。それは地球を飛び越え銀河を巻き込み宇宙を飲み込む。はてさてその先は?


 どこまで繋がっているのだろう。宇宙は広がり続けているという。それはそうだろう。と同時に割り切れない3のように、永遠に小数点が続くものもある。相反する方向に広がり続ける事象はおそらくどこかで結ばれているに違いない。だから地球は丸いのだ。私の音楽もそうでありたい。 

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