返信その6

   小林 卓也様


 お手紙ありがとうございます。

 調査報告のすばらしさにおどろきました。相変わらずの行動力に加えて発想力にも感心させられました。それぞれの調査について感想を書きます。


 いろんな人に聞き込みをしても、誰も名札のことを知らなかったというのは残念な結果のようにも思えますが、その名札が取り付けられたのがかなり昔のことだったということがわかったのが大きな成果だと思います。この結果は今後の推理のために役立つと思います。


 城山くんたちの調査も本格的ですね。名札の文字が同一人物によって書かれているという調査結果は、本物の警察の捜査でも行われる筆跡鑑定と同じです。この結果が正しければとても重要な手がかりになると思います。


 小林様のサクラとナツメとカリンの共通点を探すという調査もとても着眼点がよいと思います。サクラがバラ科というのは私も知っていましたが、クロウメモドキ科というのは初めて知りました。勉強になります。


 さてここで、私の推理の進み具合についても報告しておきましょう。

 一番最初にいただいた報告を読んだときには気がつかなかったのですが、よくよく考えてみると変だなと思うことが出てきました。

 それは「サクラ」と書かれた名札のことです。

 小林様はこれら三つの木についてくわしく調べられたので気づかれているかもしれませんが、「ナツメ」と「カリン」は、そういう名前(種類)の木がちゃんと存在しており、植物図鑑にも載っています。しかし「サクラ」という名前のつけられた桜の木はないのです。犬でたとえれば「トイプードル」や「チワワ」という種類の犬はいますが、「イヌ」という種類の犬がいないのと同じことです。

 今回問題となっている北山小学校の校庭のすみっこにある桜の木に、正しい名前の名札をつけるのなら「サクラ」ではなく、「ヤマザクラ」とか「ソメイヨシノ」と書いておかなければなりません。つまり、桜の木に「ナツメ」や「カリン」という名札がついているのはもちろん変なのですが、桜の木に「サクラ」という名札がついているのも別な理由で少し変なのです。

 これはいったいどういうことでしょう。

 小林様はこの疑問についてどう思われますか。探偵団のみなさんの考えはどうでしょうか。

 もし、何かを思いつかれたら教えてください。

 合わせて次の報告もお待ちしています。


                            Fより


 追伸

 梶井基次郎という小説家をご存知ですか。

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