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F先生、こんにちは。
あれからまた席替えがあって、K君は廊下側の一番前(先生が入ってくるところです)、私は窓側の一番前になりました。となり同士ではなくなってしまいましたけど、ぜんぜんさびしくありません。F先生が心理テストの秘密を教えてくださったからです。
火曜と木曜の夜は、ほっこりとあたたまったおふとんの中で、F先生にいただいたお手紙を読み返してはニヤニヤしています。心理テストの秘密を解いたことは(解いたのはF先生ですけど)もちろんK君にはないしょです。スケボー仲間と楽しそうにスケボーをしているK君を見ながら「ふーん、そうだったんだあ」って、自習時間にやった心理テストを思い出してはまたニヤニヤ。幸福指数120はまだ継続中です。
ここで話は変わります。
父のことを報告しておきます。
最近インターネットをよく見るようになった父が、F先生の作品に関するレビューや感想を見つけると熱心に読んでいます。その中でも「へっぽこ探偵vs地獄のマジシャン」への感想の多くが気にくわないようで、「こいつらなんにもわかっちゃいない」「これじゃあ、Fさんが気の毒だ」とパソコンの画面に向かってぶつぶつ言っています。
先日は私を呼びつけて「お前はこの本の良さを理解できたのか」と聞いてくる始末です。そのあとに父が語った「へっぽこ探偵vs地獄のマジシャン」への思い入れを、おぼえている範囲で報告します。
父曰く――
・わかってないやつらは「夢オチ」などとほざいているがそんな単純な解決方法ではない。
・確かに話の大半が夢の中での場面だ。ちゃんと確かめたら八割以上あった。かなり多いな。
・でもそれは良いのだ。そう、それだけなら問題はない。(どうやら父的には問題はないそうです)
・「三百人もの観客の前で演じられた美女の胴体真っ二つマジックが、実は本当の殺人場面だった」というつかみにワクワクした読者が「すべては藤松君の夢でした」と知ったときの落胆は大いに理解できる。
・実は父さんもムカッとした。
・だけど藤松君の夢の中で起きたマジシャンによる猟奇的殺人事件の謎は、藤松君の夢の中ですべて論理的に解明されている。
・胴体真っ二つやギロチン場面で気を失った藤松君は、毎回そのまま夢の世界へと入っていくが、それは実は夢の世界ではなく、現実の世界で目覚めたということになる。なのでそこで起きている地味な事件こそが藤松君が本来解決すべきものだったのだ。(ネットのレビューを見て理解できたそうです)
・なんと見事な構成であることか。
・しかも夢の中でのど派手でグロテスクな場面は、現実の世界で起きた小さく地味な事件から読者の目をそらすためのミスディレクションにもなっている。
・さらには美女の胴体真っ二つ事件とギロチン事件を解決に導いたロジックが、現実世界の事件の謎を解く鍵となっているのだ。
・すごい。すごすぎる。
・「夢オチサイテー」「手抜き」「金返せ」とか書いているやつは、この小説のすごさをなにもわかっていないのだ。馬鹿者どもめ。
・ところで璃子は、ちゃんとわかっているんだろうな。
最後はなぜか私に振ってきましたが、正直に言うと父の説明はなんのことやらチンプンカンプンです。ただ、父が「へっぽこ探偵vs地獄のマジシャン」を高く評価しているということだけは伝わってきました。なのでF先生には父の発言をそのままお伝えしておきます。もしも失礼なことを言ってたらごめんなさい。わかってない私はもう一度読み返してみます。
それではまた。
父も新作を楽しみにしています。
松島 璃子
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