　　　太田　俊哉様

　お手紙ありがとうございます。

　新しい作品や作者との出会いにはいろいろあるものですね。「親がその作家の本をたくさん持っていた」という太田様のケースは特殊なものではないかもしれませんが、やはりこうして教えていただかなければ知りえないものでした。私が軽い気持ちで書いてしまった質問のために、わざわざお返事を送っていただきありがとうございました。

　さて、話は変わって占い師の件です。

　ムラサキと同等かそれ以上にすごい占い師――ですか。

　正直なところ、それはかなりあやしげな話だと思います。特に大学内で広まっているその手の噂や勧誘めいた話には注意が必要です。詐欺商法的なものであればまだしも（それでも駄目ですが）、万が一、その背景にカルト教団のような存在があった場合、うかつに接近すると、取り返しのつかないことになりますから気をつけて下さい。

　作者の私が言うのも変なのですが、ムラサキという占い師はあくまでもフィクションの中に存在するキャラクターです。話を面白くするために、現実にはあり得ないような演出をしています。身もふたもない言い方になりますが所詮は嘘――作り話なのです。そんなムラサキと同等かそれ以上にすごい占い師が現実にいるという話には、胡散臭さしか感じられません。

　一方で、太田様がその占い師に興味を持たれる気持ちもよくわかります。私も同じような噂を耳にしてしまったら、自分で直接確かめずにはおられなくなると思います。ですから、一切コンタクトを取ってはだめだとまでは言えません。もう少し調べてみようと思われるのであれば、十分な警戒心を持って行動してください。

　ちなみに、ムラサキの占いはホット・リーデイングという手法によるものです。太田様には小説を読んでいただいているのでくわしい説明は省きますが、事前に情報を収集しておき、それを占いという演出方法で開示していくというやり方です。事前に調べたことを語るのですから必ず当たるわけです。実際の占いでもこの手法はよく用いられているようです。占いの基本はきめ細かな情報収集とその効果的な開示、適切な助言の三点セットです。このことは、謎の占い師とコンタクトをとられるにあたっての予備知識として頭の片隅に留めておいてください。

　しつこいようですが、くれぐれもご用心を。

　その上で何か困ったこと、よくないことなどが起こった場合は、遠慮なくご相談ください。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｆ拝