第15話 いざ洞窟へ

 洞窟。


 ゲームではよくダンジョンとして出てくる、地下の迷宮だ。俺がプレイしたゲームでも最初に攻略したマップにあった。


「そのハデス洞窟というのは?」


「ロキプス山脈の地下にある洞窟のことです。椹木殿がエルシド市に来る際、外壁の奥に山脈が見えたでしょう? あの麓に向かっているのです」


「あぁ。あそこの」


 確かに、平原に出てすぐ、地平線の彼方に山脈を見た覚えがある。


「ハデス洞窟には神々が残した遺跡が数多く存在しています。モンスターが住み着いていて危険な場所ですが、同時に特別な装備が眠っている宝の山でもあります」


 なるほど。俺は市長の言いたいことがなんとなくわかった。


「つまり、洞窟に潜っていい装備を見つけられれば━━━」


「はい。椹木殿でも低レベルな魔法を使える可能性がありますし、そのグリモアに記述されている魔法を訓練する場としてももってこいです」


 俺は一人納得して考え込んだ。


 エルシド市に来るとき、冒険者はグリモアから魔法を出しただけではなく、剣などの装備も出していた。


 俺のグリモアには最低魔力行使量の記述はあるが、装備品については何も書かれていなかった。


 まだ可能性はある。そう思ったところで、竜車が止まった。


 開かれたドアから降りると、目の前には洞窟の入り口と思しき巨大な入り口があった。中は真っ暗で、異様な風が吹いているように感じる。


「現在は勇者の一件があるため、全冒険者の立ち入りを禁止しています。お二人でゆっくりと探索ができるでしょう。あとはこちらですな。おい」


「は、ただいま」


 地龍の手綱を持っていた従者が竜車の背後に周り、大きな荷物を二つ地面に置いた。


「こちら、探検に必要な小道具類になります。少ないですが食料品や調理器具もあるので、二ヶ月程度なら暮らしていけるでしょう」


「おぉ!」


 マジで気が利くってレベルじゃねーなゴリ市長。どんだけ準備いいんだよ。


 でもなー、すげー重そう。部活で背負ってる荷物の五倍はある。これを背負って洞窟内を歩き回るのはちょっと勘弁してほしい。


「マリア殿」


「わかりました」


 マリアが腰からグリモアを取り出し、ページを開いて呪文を唱えると、


「ホールインスペース」


 マリアの背後の空間に白い渦が出来上がった。


「幸多さん、この中に荷物を入れていただけますか?」


「オッケー」


 荷物を抱えて渦の中に荷物を放り込むと、荷物は渦の中に消えていった。


「おぉ」


「空間魔法です。これでいつでも荷物を取り出せますよ」


 四次元ポケットかよ。ほんと便利だな、グリモアと魔法って。


 俺もこういう魔法覚えてーなー。


「では、我々はこれで。二ヶ月後に成長したお二人に会えることを楽しみにしています」


「ありがとうございます、市長」


「ありがとうございます」


 頭を下げたマリアに続いて、俺も頭を下げる。


 ゴリ市長の本気に俺も応よう。


 竜車が走り出したところで俺とマリアは同時に顔をあげる。


「んじゃ、行こうか」


「はい、幸多さん」


 俺たちは入り口に足をすすめる。真っ暗ではあったが、俺たちの足取りは軽いものだった。


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